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地域通貨ってなに?

自然流の気軽な助け合いのノウハウを全国に発信

 皆さんはご近所に気にかかる人はいますか? その人は何か困っていることがありますか? その人を助けてくれる人はいますか?
 では、皆さん自身が何か困ったときに「助けて」と気軽に声を掛け合って助け助けられる関係の方はいますか?
 さわやか福祉財団は、地域では普段から「助けて」と言い慣れていないことに着目しました。「助けて」と言えない人たちが気軽に「助けて」と言えるようにするための手法、団体やグループ型の活動より、もっと気軽なゆるやかな近隣の助け合いの形を地域に普及させていくための様々な働きかけを行っています。
 その一つの方法が「時間通貨」です。時間通貨は誰もが平等に持つ「時間」を単位とした地域通貨の一種です。時間はすべての人に共通のもの。大人も子どもも、プロも素人も等価値で分け与えることができるものです。
それぞれの人が持っている能力はすべて役に立てることができる、皆が社会に活かせる何かを持っている、そんな助け合いの形が「時間通貨」です。ぜひ、皆さんも地域ではじめてみませんか?

地域通貨は、感謝の「心」をカタチにする手段

 「地域通貨」とは、互いに助けられ支え合うサービスや行為を、時間や点数、地域やグループ独自の紙券などに置き換え、これを「通貨」としてサービスやモノと交換して循環させるシステムのことをいいます。「国民通貨」である「円」などとは違った「もうひとつのお金」ともいうべき働きをするものです。(地域通貨と国の通貨の比較表を参照)
 長年住み慣れた自分の町や暮らしを少しでも自分たちの手で守りたい。自分らしい生き方をしながら生き甲斐を持って暮らしたい。そんな想いや優しさ、「ありがとうの心」をカタチで表現し、仕組みを作る手段とする地域通貨の取り組みは、最近各地で始められています。
 私たちは普段、サービスやモノを得る場合には国の通貨(円)を使って購入しますが、その際、サービスやモノに対して支払う額は、市場経済での価値が基準となります。それに対して、地域のグループなどがそれぞれに名前や表現の方法を決めて独自に発行し、サービスやモノの価値を自由に決めて交換していくのが「地域通貨」です。地域通貨は、市場では価値が決められない様々なボランティア活動や眠っている能力や才能を引き出し、地域で活かすことができる仕組みの一つです。ですから、地域通貨という表現はしていますが、私達みんながもっている感謝の「心」をカタチにする表現手段といえます。

地域通貨で支え合いのきっかけづくりを始めてみませんか?

 「さわやか福祉財団では、地域でお互いが自然に助け合い、支え合いながら、誰もが安心して暮らせる『新しいふれあい社会』の実現を目指した活動を展開していますが、そのためには、近隣で助け合える関係づくりが大切だと考えています。
 例えば、「お元気ですか」と声をかけられたり、ゴミを出してもらったり、ついでの買い物に行ってもらうなど、ご近所での何気ない支え合いがあれば、地域でもっと安心して暮らせるのかもしれません。けれども、このようなちょっとしたお願いでも、なかなか人に頼みにくかったり、頼まれれば引き受けるけれどきっかけがない、というのが現実ではないでしょうか。
 最近注目を集めている「地域通貨」は、地域の中で「助けてほしい」「何かお手伝いしたい」という気持ちをつなげるための手法として、また、地域の活性化を目的として日本の各地で始められています。その数は把握できるだけでも600を越えています。さわやか福祉財団が従来より進めてきた「ふれあい切符制度(時間預託制度)」も、「地域通貨」の仲間であり、現在、特に力を入れて推奨している「時間通貨」(早期循環タイプ)も共に相互扶助を目的にした地域通貨で、地域のふれあいづくりを目指しています。
 さあ、あなたも「地域通貨」のすばらしさを知り、地域の支え合いのきっかけを作ってみてはいかがでしょうか。

地域通貨の目的

 地域通貨の取り組みは、自分達のまちの生活や福祉のサポートであったり、環境によいライフスタイルの実現であったり、生き甲斐や喜びの表現であったりしますが、その目的は大きく分けると次の3通りがあります。

1)相互扶助に力点を置くもの
2)地域経済の活性化に力点を置くもの
3)環境などのボランティア振興に力点を置くもの

 どちらにしても、地域の人々がお互いに持つ知恵、時間、才能、モノなどをもち寄って交換し、互いに助けられ助けるという「地域支え合い」を実現しようという意味で共通点をもっています。また、こうした取り組みは、行政や市場から得られるサービスや財だけでは、地域や市場が、また「豊かさ」が形成されるのではないという想いが込められています。つまり、眠っている社会資源を掘り起こし、それらを有効に活用させつつ新しい地域社会の形成に役立てていこうとするのが、地域通貨に取り組む目的です。

地域通貨には、どんなタイプのものがあるの?

 地域通貨は、1)交換の期間、2)交換される対象、3)表現の単位、4)表現の方法(発行・管理形態)などによって様々です。どんなタイプ、カタチにするのかは、そのグループ次第で、どれが優れていてどれが劣っているというものではありません。今まで使っている地域通貨に加えて、他の方式を加えたりすることや、新たに独自につくり出してもよいのです。そんな観点から、いまある地域通貨について整理してみましょう。

交換されるもの(取引対象)は

 地域通貨の取引対象には次の2通りがあります。

1)サービスだけをやりとりとするもの
2)サービスとモノとを対象とするもの

表現の単位(交換の基準)

 対象がサービスだけであれモノも含むのであれ、交換の際の基準がないと地域通貨は機能しません。その際の計る基準の主なものは次の2点です。

1)誰でもが平等にもっている「時間」を単位とする
2)サービスやモノの「経済的な価値」を単位とする

この他に、回数で表現するものやエネルギーで計ったりするものもあります。

支え合いが循環する期間

 近頃、話題になったり取り組みが始められたりしているのは、地域通貨が循環する期間を半年や1年といったように限定しているものですが、循環する期間によって2通りがあります。

1)ヨコ型

いま現在(同時代)の支え合いによるもの。ヨコ型地域通貨は、当財団が推奨している「時間通貨」が該当します。

2)タテ型

いずれ(異なった時代にも)通用する支え合いによるもの。タテ型地域通貨は、これまで当財団が推奨してきた「ふれあい切符制度」(時間預託制度)が該当します。

・なお、時間通貨とふれあい切符は夫々に特徴のある相互扶助を目的とした地域通貨ですが、2000年に介護保険がスタートしてから有償ボランティアの活動も次第に話し相手や精神的な満足を充たすサービスが多くなり、時間通貨とふれあい切符はお互いにその利点を取り入れ融合した運用が見られます。特にふれあい切符にその傾向が強く、団体によっては、時間通貨と大差ない運用をしています。例えば、ふれあい切符を使って時間通貨が得意とする「気軽なちょっとしたサービス」のやりとり(流山ユー・アイネット)や預託に期限を設定して、循環を促進したり(さわやか愛知)、団体への寄付など長期に亘る時間預託を取らないで、助け合いの活発な交換を促進する運用が行われています。

表現の方法(発行・管理形態)

 サービスやモノをやり取りする際の表現の方法には、次の6通りがあります。また、それらを組み合わせて使う場合もあります。

1)通帳方式

 銀行の通帳をイメージしてみるとよいでしょう。サービスやモノのやり取りを受けたらマイナス、提供したらプラスの欄に内容と共に記入します。

※具体的代表例:レッツチタピーナッツ、「ふれあい切符制度」を採用しているナルク、他ヨコ型地域通貨の多く。

2)紙券方式

 日本紙幣をイメージするようなカタチ、あるいは、名刺カードのようなカタチです。グループによっては、裏面に交換内容を誰から誰に何(どんな内容)を交換といったように記入していくところもあります。

※具体的代表例:おうみクリン、「ふれあい切符制度」を採用している「さわやか愛知」など。

3)チップ方式

 日本円におけるコインや、オセロゲームのようなチップをイメージするとよいでしょう。

※具体的代表例:だんだん、エッグ、いまづ など。

 なお、チップのやり取りだけですから記録は残りません。そのために、通帳方式などを併用するところや、「ふれあいボランティアシール」台帳で記録しているところもあります。

4)借用書方式

 手形をイメージしてみてください。あまり馴染みのない人もいるでしょうが、小切手方式ともいえるもので、個人間のやり取りを裏書きしていく方式です。

※具体的代表例:WAT精算システム(yufuやレッツチタが通帳方式と併用)。

5)パソコン記録・管理方式

 サービスなどのやり取りをパソコンで記録・管理する方式です。これも、アメリカのタイムダラーのように単独の場合と、上記の方式のいずれかを組み合わせたものとがあります。

※具体的代表例:千姫。

6)ICカード管理方式

公共施設や商店などに端末を置き、個人がICカードをもってするやり取りや情報などを、端末を通して処理します。

※具体的代表例:金谷町福祉サービス銀行、大和市LOVES

事故対策について

 地域通貨は会員間の信頼関係のもとに成り立っているものであり、身近な助け合いを行うものです。したがって、その活動の中で生じるトラブルについては当事者同士で解決していくことが最もよいのですが、そのことによって信頼関係が崩れてしまうこともあり得ることです。
 そこで、団体として活動する場合は、保険等の扱いについて考えておかなければならないでしょう。保険料は誰が負担するのか、会員個人が負担するのか、入会金などの中から団体として負担するのかなどを具体的に検討しておいた方がよいでしょう。保険には次のようなものがあります。

1)ボランティア活動保険

 この保険は、ボランティア自身がけがをした場合の「傷害事故」と、第3者の身体や財物に損害を与え、法律上の損害賠償責任を負った場合の「賠償事故」がセットになっています。申込みは、地域の社会福祉協議会に用意してある書類に記入し、補償の額に応じた保険金額を添えて申し込みます。
 この制度は、ボランティア個人またはボランティアグル-プが加入申込者となり、ボランティア個人を被保険者として、全国社会福祉協議会が一括して保険会社と締結する団体契約です。

2)送迎サービスを伴う場合の留意点

 ボランティア活動保険では、自動車による事故の場合、加入者自身の傷害のみが対象となり、同乗者のけがなどは補償されていません。そのために、個人の車で送迎をする場合は、その人の自賠責保険や任意自動車保険の保険証券のコピーをもらい、契約忘れなどがないように、また保険の最低条件などを会員で話し合うことが必要でしょう。
 移動サービスに関する保険には、「移送サービス交通傷害保険」、全国社会福祉協議会の場合には「送迎サービス補償プラン」などがあります。

3)その他の保険

 その他、在宅サービスに関するものには、「在宅福祉サービス総合補償保険」(社会福祉協議会の取り扱い)や、「市民互助団体スーパー安心プラン」「草の根市民互助団体補償共済制度」(市民福祉団体全国協議会取り扱い)などがあります。

4)覚書・念書など

 地域通貨は、お互いが支え合うことが基本なので、ややこしい書類などは必要ないと思われがちですが、やはり万一の備えとして事故対策については、会員間で事前に話し合っておくことも必要です。
 保険以外にも例えば、会員間で何らかの文書を交わすなども考えられます。こうしたいわゆる覚書や念書は法的な裏付けはありません。しかし、お互いの信頼関係の上に立った助け合い活動における確認事項を書類にしておくことも大切でしょう。

 以上のように地域通貨をはじめるためのいくつかの準備がありましたが、とにかく一歩前に踏み出すことが大切です。「地域の支え合い」を実現するために、その一つの手法として、「地域通貨」をはじめてみませんか?

どんな地域通貨があるの?

地域の活性化をめざして各地で始められている地域通貨・時間通貨をご覧いただけます。
日々新しい地域通貨・時間通貨が誕生しているため、これはほんの一部です。
地域通貨のリンク集からそれぞれのホームページもご覧いただけます。