行政の支援を活用しましょう

平成の大合併と言われ、市町村合併が全国的に席巻している中で、各市町村では合併による遊休建物が各地で出てきています。例えば、市役所・町役場の建物や公民館などの公共施設をはじめ、農協や郵便局・銀行などの空き店舗までさまざまな遊休建物が出ています。また、少子化の影響で小学校の余裕教室(空き教室)も増えています。そのような施設の有効な活用として市民の立場から「ふれあいの居場所」を積極的に提唱し、行政による施設の提供などハード面での協力をえることもできます。

一方、自治体の福祉事業やまちづくり事業などにおいても「居場所」の必要性が認識されつつあり、開設のための助成金などの支援がえられる自治体もあります。「ふれあいの居場所」づくりには市民の声を反映することが大切です。市民側でソフトの部分を担い、協働して居場所づくりを進めることが、たくさんの「ふれあいの居場所」をつくっていくための牽引力になることでしょう。

さわやか福祉財団ブロック支援アドバイザー米山孝平
(NPO法人流山ユー・アイネット代表)

行政も居場所づくりを支援し始めています。

網走市

地域住民グループ育成事業(介護福祉課高齢者福祉係)

目的 高齢者の自立支援・介護予防のための地域住民活動を支援・育成
場所 地域の町内会館やコミュニティセンターなどを活用してもらう。
それができない地区では、家賃の一部を補助(*2007年12月までに13ヶ所が開設)
助成 毎月3万円(4月当初に事業計画)(*家賃が必要な地区は最大8万円までの補助)
特徴 対象者は高齢者で、閉じこもり防止などを目的にしているが、ボランティアとしていろいろな団体の関わりが進み、高校生ボランティアや世代間交流をプログラムにしているところもある。
担当者の声 細川英司さん

支援のためのお金は出しますが、活動内容に口は出しません。市内に20ヶ所を目標に事業を進めていますが、それぞれの居場所をボランティア団体の創意工夫を生かして、それぞれが他とは違う色をもった「居場所」をつくることができれば、行く人も選べるし、地域を越えても交流できます。地域の意欲ある方が手を挙げて積極的に進めて欲しいです。

熊本県

地域の縁がわづくり推進事業(健康福祉部健康福祉政策課福祉のまちづくり室)

対象 対象者を限定することなく、誰もが集える場所で、地域住民への福祉サービスを提供する事業
助成率・助成金額 1団体 200万円以内
設備費(設備・備品購入)施設改修費(2分の1以内補助)基本事業費や管理費は対象外
場所 既存の施設を活用・再生
特徴 高齢者も障がい者も子どもも、誰もが集える場所で地域の交流ができる居場所
既存の施設の改修や設備投資の援助をし、運営は推進団体に任せる
活用した人の声 NPO法人サンアンドムーン 木下眞理子さん

デイサービス武蔵ケ丘サロンに
ふれあいの居場所“足湯”をオープン

デイサービスのサロンを「地域の人たちの居場所にしたい」という思いを実現するために「縁がわづくり」事業の助成金をいただきました。
地域のいろいろな人が集まることのできる「居場所」をつくることが、まちづくりにつながるという考え方のもとにこのような事業ができまうした。助成金をいただけたので、多くの方が活用できる「足湯」をデイサービスのサロンのベランダに併設しました。利用者の方と、地域の方の交流が広がる可能性のある居場所になりました。

担当者の声 佐崎一晴さん

ともに創る『地域共生』くまもとを目指し、誰もが気軽に集え、さまざまな交流やコミュニティを生み出していく地域福祉の拠点づくりのために「地域福祉支援計画」=「地域ささえ愛プラン」を策定しました。行政では福祉・教育・施設に関する部署という具合に対象者によって縦割りになりがちです。それぞれの部分を横につなぎ、隙間を埋めるような事業にしたいと思います。「縁がわづくり」には、その可能性があります。

山形県

地域福祉計画策定委員加藤由紀子さん

NPO法人ふれあい天童代表(さわやか福祉財団ブロック支援アドバイザー)

「地域福祉計画」の中でも「居場所」が今後の地域福祉の中心になると、市民の福祉活動が広がるはずです。地域のニーズも高まっていることを実感しています。その点からも必ず計画の中に入れるように、行政に対して主張することが必要です。行政に理解をしてもらうことで、地域全体に普及していく上でも大きな発展につながってきます。策定委員として提言し、「居場所」の重要性が計画の中に盛り込まれました。

山形県地域福祉計画策定委員会では
次のような内容が話し合われ、「居場所」の必要性を再認識しました。

~交流の場づくりの推進~ 現状と課題 より

  • 地域住民がふれあい、コミュニケーションを図る場所を提供することは、「居場所」の役割であり、また、地域住民が自ら地域の問題を解決していくための「地域の力」を高めていくという1つの大きな目的があります。
    開催日や時間の制限、決められたプログラムへの参加者の興味や関心の有無、参加対象者が特定の人に絞られていることなど、地域住民の様々なニーズに応えることができる居場所づくりは、難しいといえます。これからは、既存のサロンなどに加え、より幅の広い地域住民の受け皿となる「地域の茶の間」的な居場所が求められていくと考えます。
  • また、この居場所において多くの人とふれあうことは、それぞれの人に少なからず刺激を与え、「まちの保健室」的な存在となり得ると考えます。
    高齢者は、単に同じ空間に子どもたちがいるだけでも多くの刺激を受け、それが介護予防や、精神安定につながります。障がい者にとっても、地域とふれあうことで社会参加の足がかりとなります。
    子どもたちにとっては、家族や学校の先生とは違う、地域の大人に誉められたり、叱られたりする経験により、社会性が育つとともに、子ども同士の遊びやふれあいの中で、主体性、友情、助け合う心など、子どもの健全育成に効果が期待できます。