活動報告
北から南から 各地の動き
さわやか福祉財団では全国各地の助け合いの創出、
住民主体の地域づくりの推進を支援しています。
その取り組みの一部をご紹介します。
2025年8月1日~8月31日分
SC=生活支援コーディネーター
3ステップ=ステップ①体制づくり、ステップ②ニーズと担い手の掘り起こし、ステップ③助け合い創出
SC研修・情報交換会等に協力
長崎県
8月4日
長崎県「令和7年度助け合い活動第1回情報交換会『知る・つながる・動く!』」が開催され、県内から約50名が参加した。冒頭に県長寿社会課の山田薫企画官からあいさつがあり、「タイトルが固いという意見もあり、『知る・つながる・動く!』と加えた」とのコメントもあった。
今回は県外の先進地の協議体活動に関する実践報告、専門家の助言、県内市町間の情報交換の場を設けることで(1)行政と生活支援コーディネーターの連携や、協議体活動を通してどのように住民主体の助け合いを進めていくかを考える、(2)参加者が県内外の様々な取組内容や課題を情報交換することにより、今後の活動の参考とするとともに、参加者同士のネットワーク形成を図る、を目的とした。
行政説明で、各市町の第1層・第2層SCや協議体等の状況、各市町ごとのサービス提供団体( 配食、見守り、移動支援、買い物支援、日常生活支援、常設型居場所等)の状況、アドバイザー派遣の取り組み状況などが共有された。
また、昨年度と今年度の制度改正について説明があり、①高齢者が尊厳を保ち地域で自立した生活を送るためには、地域住民の主体的な活動とそれ以外の多様な主体の活動とをつないでいくことが重要、②高齢者が単に生活支援サービスを受け取るだけでなく、自分事として地域の活動に主体的に参加することを促す、③地域づくりの観点から、高齢者施策にとどまらず多世代交流など、様々な分野の取り組みを進める、とした。
当財団の講義は、事前アンケートを基に組み立てた。制度改正にも触れ、これまでの取り組みを生かすことの必要性、地域をよく見て住民の声を聞き、地域課題を多様な世代・組織・団体と共有していく必要性、住民主体の助け合いの創出はサービスの補完ではないこと、創出の手順とポイント、各地の事例を伝えた。さらに企業との連携については新潟県佐渡市の事例を挙げ、連携の際の行政とSCの役割を紹介した。
秋田県大館市の第1層SC戸澤真澄氏は、住民主体の地域づくりをしてきた中で、担い手の減少や町内会の解散といった課題に対し、地域づくり加速化事業を活用して、いろいろな人や組織を巻き込みワークショップで議論し、9つのプロジェクトを様々な人や組織と進め始めている様子などを具体的に紹介した。
グループワークは、地域を越えたグループをつくり、次の通り行われた。
①「助け合いの体制づくり」について
②「ニーズ把握や担い手の掘り起こし」について
③「助け合い活動の創出」について
◆①~③の選択制で、各メンバーの困っていることについて、他のメンバーの実践で解決のヒントとできることを出し合う。
(2)行政と生活支援コーディネーターの連携
①「課題」となっていること
②「工夫」していること
◆意見交換の中で、共通する課題や参考にできる工夫についてまとめる。
前半の情報提供を受けての情報交換会は様々な気づきや悩みを出し合う良い機会になったと思う。参加者の表情が明るくなるのが分かった。
これまでも市町全体の評価やヒアリング、伴走支援等を実施してきた長崎県。これからを見据えて地域の状況を把握し、強みを生かしながら進めるというブレない姿勢を感じた。(鶴山 芳子)
新潟県
8月8日
新潟県主催の「令和7年度新潟県生活支援体制整備事業研修会」がオンラインで開催された。参加対象は、SC 、市町村生活支援体制整備事業担当者。傍聴者として、 協議体構成員 、認知症地域支援推進員、チームオレンジコーディネーター 、介護予防のための通いの場担当、県地域振興局健康福祉(環境)部職員等。生活支援体制整備事業と他の関係事業の連携も視野に入れており、県内市町村から120名ほどが参加した。
狙いは、令和6年度地域支援事業実施要綱の改正を踏まえ、多世代の地域住民、生活支援・介護予防サービスの実践者、市町村、地域包括支援センターの連携・共創を推進する生活支援コーディネーター及びそれぞれを支える協議体の基本的な役割や制度に関する理解と、地域の多様な主体の多様な活動主体との連携に係る具体的取り組み事例を通じ、各地域における支え合いの体制づくりの活性化のヒントを得る機会とすること。
昨年度の改正の理解と多様な主体との連携を学び、各市町村の取り組みに生かす研修としたいと企画された。当財団は「SCの役割が大きく変わったわけではないことを伝えてほしい」と県から依頼を受けた。また、「企業との連携」「認知症施策との連携」の事例の相談を受け、長崎市と岩手県矢巾町を紹介した。
最初に県から説明で、令和7年度新規事業である「包括的支援事業を活用した地域づくりの推進」を「SCの役割を変えるのではなく切り口を変える」と説明があった。
当財団の講義は「これからの地域づくりに制度をどう生かしていくか共に考えよう―腰を据えてじっくりと―」と題し、制度改正はあったが「これまで取り組んできたことを大きく変えるのでなく、取り組んできたことを生かしてじっくり腰を据えて働きかけましょう」と伝えた。その上で、“住民が主役の地域づくり”をベースに、住民の暮らしやニーズをよく知っているSCが企業も含めた多様な主体に呼びかけ話し合う仲間を広げていくこと。また、認知症の人も当たり前に受け入れ共に過ごしている、地域共生社会のベースとなる共生の居場所の事例について紹介した。さらに、多様な主体の連携事例として、秋田県大館市の取り組み事例も紹介した。
事例は、長崎市から「民間企業と連携した買い物支援」と題して第2層SCの岩岡大樹氏が発表。矢巾町は「認知症地域推進員×生活支援コーディネーター」と題して、両方とも担当している鱒沢陽香氏が具体的な取り組みを紹介した。
参加者同士の情報交換は、「ガイドライン改正で感じたこと」「多様な主体による多様な生活支援・介護予防サービスの提供をするには、どのような事業・団体と連携できそうか」について、ブレイクアウトルームでグループごとに話し合い、発表で全体共有した。
最後に講師3名がまとめのコメントを行った。
人口減少により、地域のつながりや家族機能も低下している今、企業連携によるサービスづくりが強調されているが、住民主体の活動も企業連携によるサービスづくりもどちらも広げていくことが大切だ。また、住民が安心して暮らし続けられる地域づくりをさまざまな組織や団体と一緒に住民の声を聞きながら進めることの大切さをこれからも伝えていきたい。(鶴山 芳子)
アドバイザー派遣事業に協力
大村市(長崎県)
8月5日
長崎県のアドバイザー派遣事業により、大村市の第1回関係者検討会が行われ、当財団もアドバイザーとして参加した。
大村市は人口約10万人。長崎県の中では最も高齢化率の低いまち。これまでもフォーラムや居場所づくり勉強会など市民に働きかける活動をしてきたが、さまざまな課題もあり、今後に向けて関係者が住民主体の地域づくりをどう進めていくのか、また、ニーズをどう掘り起こしていくかなど「地域活動につなげていくための取り組みの検討」を行った。参加者は第2層SC6名、地域包括支援センター職員5名、県担当者、県央保健所2名、財団。
今回の企画の背景に、第1層・第2層協議体の機能が十分でないこと、第2層SCが他の業務と兼務であること、包括が直営1か所のみであること等々、体制の問題がある。多くのまちも抱えているであろう課題である。
そこで、現体制の中でできること、取り組むべきことを整理し、体制や地域性に合った取り組みを進めていくことを狙って話し合った。整理してみると、町内会等の小さな単位での第3層協議体でニーズ調査やヒアリング等を通じて活動が創出されるなど活発化している。そこに着目して第3層協議体を充実していくことを最優先にしながら、住民主体の助け合いを広げていこうということになった。財団からは、「第3層を生かしたボトムアップの地域づくり」と題し、全国各地の事例やニーズの掘り起こし方法等を紹介し、参加者全員で議論した。これを受けて、さらに関係者で整理し具体的な取り組みを進めていく予定。(鶴山芳子)
田上町(新潟県)
8月19日
田上町で、新潟県のアドバイザー派遣事業を活用した1回目の支援が行われた。行政の担当者、第1層SC、県担当者、当財団で昨年度の支援を振り返り、その後の取り組みや課題を共有し、今後どのように取り組んでいくかについての作戦会議となった。
同町は、第1層協議体が仕掛けた市民フォーラムから勉強会を重ね、空き家を活用した居場所「つなぎが~家」と有償ボランティアの生活支援グループが立ち上がり動き出している。課題として、①「居場所『つなぎが~家』は中心メンバーが協議体メンバーとなっており、住民の中核メンバーを何とかしたい」ということ。②区長とも話し合い、生活支援としてごみ出し活動を始めようとしたがうまくいかず、「住民の困り事に対して、チームメンバーのできることで解決すること、ごみ出しに限らず、また地域を限定せずに始めていこう」と方針を転換したが、その仕組みづくりに悩み始めている。③2つの取り組みが動き出したときの第1層協議体の関わり方について悩んでいる。
①~③それぞれについて質問しながら、いくつかの方法を提案した。
①居場所:「つなぎが~家」を会場にした勉強会を開く。空き家を活用した共生常設のモデルとして発信する。地域(行政区など)の枠を超えた居場所ということ等も発信する。その中で中核メンバーを見つけ、その人たちを核にしていく。3人程度はいたほうがよい。
②良い方向になったと感じる。住民の困り事を受けて、誰がどうしていったらできるか、1つずつ対応していく。その体験の積み重ねをメンバーで共有していく。メンバー間で頼む側の気持ちを学び合っていく等など組織づくりをしていく。
③協議体は、居場所、生活支援などの取り組みの課題解決に向けた話し合い支援、勉強会支援、情報交換会の開催による継続支援、モデルとなる活動を町内に広げる取り組みなど「広げる」ことで具体的に取り組んでいく、等の提案と意見交換を行った。
今回の議論を受けて、11~12月に向けて第1層SCは第1層協議体や行政と一緒に取り組みを進める予定。(鶴山 芳子)
西海市(長崎県)
8月22日
西海市で、アドバイザー派遣事業を活用した「地域助け合い従事者勉強会」が開催され、当財団がアドバイザーとして協力した。対象は、第1層・第2層SCと協議体、助け合い活動実践者、地域包括支援センター(行政)、社会福祉協議会。
同市は、5年前から第2層圏域(5圏域)ごとにフォーラムや勉強会を開催し、住民に助け合いの必要性を伝え、助け合い創出を進めてきた。今年度11月に5圏域目の西彼地区でフォーラムを予定しており、第1段階である「住民への啓発」を終える予定。次の段階として何に取り組むか検討を始めている。今回の勉強会は、地域助け合いを推進するために、今後の方向性、協議体の機能、SC・行政・関係機関の役割を考えることを目的に行われた。
講話は、山梨県南アルプス市の元第1層SC斉藤節子氏から。住民主体の地域づくりを推進するために、行政、SC、社協で「本当の住民主体とは」「どう伝えるか」を何度も議論し、市民フォーラムや勉強会から協議体の立ち上げを時間をかけて取り組んできたこと、今では第3層59圏域が中心となり、そこを第2層16圏域がバックアップし、第3層から上がってくる課題などを情報交換会で議論。第1層が情報交換会等を通じて市全体として取り組む必要があることを推進するなど、住民の声が反映される地域づくりについて発表された。
質疑応答は当財団も関わりながら進め、活発な意見が出された。「担い手が足りない」との質問に、「担い手が広がらないのは、地域の実情などまだまだ知らない人が多いということでは。子育てをはじめとして困り事を抱えている人も多い中、みんなで一緒に話し合っていく機会をつくってみては」と回答。「地域活動の役員のなり手がいなくて困っている」との質問には、「協議体は自由な活動で、役としてではなくやりたいからやっている。規約がなければ続かない活動は続けなくてもいいのではないか」との回答だった。
その後、地域ごとに意見交換を行い、感想等を全体で共有した。今日の話を聞いて地域で取り組んでいきたいこととともに、移動支援や若い人たちの参加についての質問等も出され、斉藤氏と財団からコメントした。
終了後アンケートでは、「地域助け合い活動(協議体)を市民に周知し、理解していただくことが大事」「とても分かりやすい説明で、私なりにもやれることがたくさんあるのではないかと気持ちが楽になった。今日の話を地域で活用したい」等の反響があった。(鶴山 芳子)
長与町(長崎県)
8月25日
長与町では、6月の市民フォーラム参加者を対象者としたアンケートで記名した人を中心に、第1層・第2層SCと行政で勉強会「ながよ みんなで語ろう会」を開催している。この日は2回目の語ろう会。目的は第2層の南地区と中央地区で協議体を立ち上げること。すでに3地区で第2層協議体が立ち上がり動き出している同町においては、この2地区が立ち上がることですべての地域に協議体が設置されることになる。
1回目の語ろう会では「『あったらいいな』を話そう」というテーマで、地区ごとに分かれてグループワークを行った。2回目のこの日は、振り返りとして1回目の内容をSCらが「集まりの場」「買い物支援」「見守り」「移動支援」「その他」に整理した資料と共に発表し共有した。
次に「『あったらいいなを実現するために』何から取り組みますか?一緒に考えよう」と題して当財団が講演。第2層協議体の役割を確認し、全国のいくつかのまちの第2層協議体の具体的な取り組み事例を紹介した。
その後、「『あったらいいな』を実現するために、第2層協議体として何ができるか考えよう」というテーマで、地区ごとに分かれ活発な議論が行われ発表で共有した。たくさんの気づきや「まだまだ知らない人が多いので、多くの人に知ってもらう必要がある」「さまざまな地域活動があることが分かった」など前向きな意見が出た。
アンケートでは、第2層未設置地区(南部で4名、中央で4名)、第2層設置地区(高田で2名、北部で1名)で協議体参加希望への記名者がいて、すべての地区で第2層協議体立ち上げにつなげることができた。
今後、同町では、①第2層協議体設置地区の住民で協議体に参加希望の方へ、次回の協議から入ってもらう、②第2層協議体未設置地区の住民で協議体に参加希望のある方へ、キックオフ会を開催、③上長与地区はコミュニティと連絡を取りながら設置への支援を行う。SCと行政が連携して進めていきたいとのこと。(鶴山 芳子)
新発田市(新潟県)
8月26日
新発田市の関係者による情報交換会が開催された。県のアドバイザー派遣事業を活用し、昨年度から継続している第2層協議体の立ち上げを目指し、今年度はフォーラムを開催したいとの計画。
この日は5つの地域包括支援センターのうち2圏域、市社会福祉協議会、第1層SCを
同市は第2層協議体を17圏域に分けて立ち上げる計画で、これまで川東地区の「いきいき大作戦」をはじめ3圏域で立ち上がっているが、他圏域はこれからという状況。2圏域の包括の報告によると、包括がSCのような役割で住民の声を聞き、住民主体の活動を立ち上げ支援している地域がいくつか見られることから、これを生かし核にしていけば、助け合いを広げていけるのではないか、第2層になっていく可能性も見えてきた、ということが今回分かった。
財団からは「目指す姿の実現に向けて何ができるか」と題し、同市の目指す姿を共有した上で、第2層協議体の役割について各地の事例を紹介してイメージやさまざまな役割を共有。また、フォーラムの開催やその後の勉強会、第1層、第2層、第3層の役割などについて事例を交えて情報提供し、今後の検討に役立ててもらうこととした。
「住民主体の助け合う地域を広げていきたい」という考えの中で、何に焦点を当ててフォーラムを開催するか検討中のようだった。焦点は、①主体的な第3層が立ち上がり始めている。フォーラムでアピールして広げるか、②第2層協議体を立ち上げていくことを目的にフォーラムを行うか、などフォーラムの狙いと趣旨について、また、フォーラムの目標をどうするか、そのための内容をどうするか、周知するエリアをどうするか(全市にするか)。フォーラム後の勉強会等、フォーラムに参加して活動に関心を持った人たちをどう生かしていくのかなど、検討事項を提案した。
今後は関係者で議論を進め、12月頃にフォーラムを開催する予定。その間、県と財団も協力して、目的を達成するためフォーラムがより良いものになるよう、オンラインで打ち合わせをしながら議論していく。(鶴山 芳子)