活動報告

北から南から 各地の動き

さわやか福祉財団では全国各地の助け合いの創出、
住民主体の地域づくりの推進を支援しています。
その取り組みの一部をご紹介します。

2024年8月1日~8月31日分

SC=生活支援コーディネーター
3ステップ=ステップ①体制づくり、ステップ②ニーズと担い手の掘り起こし、ステップ③助け合い創出

住民に参加を呼びかける支援
(住民対象のフォーラムや勉強会の支援等)

石川町(福島県)

8月22日

 石川町で行われた「令和6年度 生活支援体制整備事業「支え合いの地域づくり」講演会」で当財団が講師を務めた。参加者約80名。
 石川町では、自治協議会福祉部会を第2層協議体としているが、自治センター職員の異動や、自治協議会福祉部会の活動に地域の理解が得にくいことから、当研修会が企画された。
 行政説明の後、財団より助け合いの大切さについて説明し、続いて3地区が実践報告。
 第2層協議体である自治協議会福祉部会は、地縁関係の役職者で構成されており、必ずしも助け合いに前向きな人だけではなく、また、委員が交代することにより助け合いへの理解の継続が難しい。そのため、協議体とは別に、やる気のある人が自由に参加する話し合いの場である「サークル」を設置し、協議体とサークルとの両輪でそれぞれの利点を生かしながら連携して進めている地区もある。地域のつながりをつくるためのカフェ、デマンドバスを活用した買い物支援、傾聴ボランティアをきっかけに誕生した生活支援など、活発な実践報告に参加者も聞き入っていた。財団からは各地区の活動のポイントと、さらに活動を伸ばすためのアドバイスを行った。
 グループワークは大変盛り上がり、「私たちができる活動」について1グループから発表。男性が得意な大工仕事等に特化したボランティアや、男性のみのサロン、男性による傾聴ボランティアなど、男性が活躍できる場に焦点を当てた活動案が挙げられた。財団から、男性が活躍できる場に視点を当てていることにより男性の参加を促しやすく、とても良い発想であることをコメントするとともに、まとめでは、みんなで話すといろいろ知恵が出ることに気づきを得て、ぜひ地域に戻って話し合いを続けてほしい、と伝えた。
 この活気が今後の活動につながることを期待したい。(岡野 貴代)

壬生町(栃木県)

8月31日

 昨年度、厚労省地域づくり加速化事業で支援した壬生町から依頼を受け、「高齢者見守り連絡協議会」の研修会で講演した。参加者は見守り事業に関わっている自治会をはじめとする地域住民や地域包括支援センター、企業などで、150名を超える住民が熱心に参加した。
 同町では、企業などによる見守りネットワーク協力事業所と「壬生町地域見守りチーム員」(登録制)を立ち上げ、見守り活動を続けてきた。見守りチーム員は自治会単位でチームを結成し、声掛けやあいさつ、訪問等を通じて日常生活でさりげない見守りを展開してきたが、自治会役員の交替ややらされ感が強い地域もあり、主体的な活動の必要性や目指す地域共生社会に向けた世代を超えたつながりなど地域での活動が活発になることを狙って内容を組み立てた。
 冒頭に地域の現状(近所の関係の希薄さと家族機能の弱まり等)とこれからについて必要性を伝え、「住民はやらされ感でいっぱい」の中でどう住民主体の活動を広げていけばよいかと問題提起し、ポイントとして
①取り組んでいる活動を継続する―「いつも同じ人が…」「マンネリ化」
→視点を変えてやってみる“ごちゃまぜの関係”、「いいね!」という活動を多くの市民へ発信する
②つながりの再構築―「つながらないと始まらない」→地域で気になる関係をつくる
③見守りから活動へ―「気になることを話し合って活動を広げてみよう!」
と話し、さまざまな全国の事例を紹介した。
 現在、広がっているものの課題が生まれている見守り活動に、今回の情報提供が生かされて主体的な人の参加や活動の活性化につながってほしい。地域のつながりをつくり、お互いさまの関係で見守り合いながら、困ったときは助け合える地域づくりに向けて考える機会となり、各地域での取り組みのヒントになってくれればと願う。(鶴山芳子)

SC研修・情報交換会等に協力

山城北・山城南保健所圏域(京都府)

8月9日

 京都府・山城北保健所主催、山城南保健所共催の「京都府山城地区生活支援体制整備事業担当者情報交換会」が開催され、当財団も支援した。参加者は、両保健所圏域で人口5000人以下の5町村(井手町、宇治田原町、笠置町、和束町、南山城村)の生活支援体制整備事業行政担当者・SC・事業関係者、山城北保健所、山城南保健所、京都府、オブザーバーとして同府久御山町第1層SC松下一恵氏。
 事業関係者が複数の事業を担当しており、なかなか体制整備事業が進められていない現状があり、今後事業を進めていくため現状について意見交換し、同じような人口規模で事業を進めている町村の事例と今後の取り組みについて、行政とSCが一緒に考え、相談し合える関係づくりを目的に開催した。
 京都府から府内の事業の状況について、財団からは事業のポイントについて話し、行政とSCのグループに分かれて、「事業を進める上での課題」についてグループワークを行った。その後、財団から人口が少ない町村の事例を紹介。同じグループで「事例紹介を受けて、各町村で実現できそうなこと」について再度グループワークを行った。松下氏もグループワークにオブザーバー参加し、京都府で昨年から行っている「みんながつながる情報交換会」の情報提供も行った。
 最初は参加者から「担当している事業が多すぎて、とても事業を進められない」という意見が多かったが、保健所担当者が進行役としてグループに入り、参加町村の話を聞きながらワークを進めた。SCからは今後できそうなことについてたくさんの意見が出て、「またこのような情報交換会を実施してほしい」との意見も出ていた。
 今回は、まずみんなが集まり現状について情報共有することを目的としたが、情報交換会終了後に参加者同士が話している姿を見て、仲間づくりが大切であるとあらためて実感した。後日、参加したSCが自分の担当地区でも住民とグループワークを行ったと山城南保健所に報告があったとのことで、少しでも前に進む情報交換会になったと感じた。今後も財団として応援していく。(目﨑 智恵子)

協議体の活動・編成等に協力

山梨市(山梨県)

8月23日

 山梨市社会福祉協議会より、住民主体の地域づくりについて理解を深めたいと当財団に依頼があり、講演を行った。山梨市は第1層の体制ができており、今回は第2層協議体設置を見据えて地区社会福祉協議会の理事を対象とした勉強会となった。参加者は、第1層SC、県担当者など30名。山梨県のさわやかインストラクター塚田好子氏、長谷川すみ江氏も協力した。
 まず市社協より各地区社協の活動状況が報告された。地区社協で主体的に活動している人を発掘していきたいとのこと。
 続いて財団・鶴山より「地域のつながりと支え合いの心に満ちたまちづくり」と題して講演。住民主体の活動推進について、「自分事にする」「住民同士の相互理解」「地域共生を考える機会をつくる」「行政の覚悟」「住民同士の話し合いの場の設定」「役を持っている人以外の前向きな人の発掘」「人と人とのつながりを増やすこと」等をポイントとして挙げ、新潟県新発田市のいきいき大作戦(協議体)による世代を超えた話し合いの場や中学生との意見交換会などを紹介した。
 居場所は山梨市の「おひさま」、高知県室戸市の「男の居場所」、長崎県西海市の「ぼちぼちサロン」、静岡県袋井市「あえるもん」、神奈川県川崎市「すずの会」を挙げ、それぞれの特徴や目的を解説(「おひさま」は塚田さんから紹介)。効果はさまざまで、行きたいところをつくることが重要であることや、居場所づくりのポイントも紹介した。
 生活支援(有償ボランティア)は鹿児島県鹿屋市「泉ヶ丘きばいもんそ」(動画)と山形県天童市「ふれあい天童」の事例を紹介。有償とすることで利用しやすくなるとして、仕組みも説明。移動支援はタクシーとは違い、助け合いの理解が重要な視点だと伝えた。
 最後に、地域包括ケアシステムの中の生活支援や介護予防はより多くの住民が参加して広げる必要があること、これらを推進する人がSCと協議体であり、協議体は住民同士が地域のことを話し合う場で、行動するために話し合うチームであることを伝えた。

(質疑応答)
Q:活動に出てこない人への促しはどうすればよいか?
A:居場所の場合、常に扉を開けておくなどいつ来てもいい環境にする。すずの会ダイヤモンドクラブは世話焼きさんが自宅を開放しての居場所。気になる人に「お茶のみに来ない」と声をかけて誘う方法。
Q:住民同士の信頼関係をどう構築すればよいか?
A:例えば、山梨県南アルプス市は協議体がたくさん広がっているが、2か月に1回または月に1回、地域ごとに話し合いを重ねている。何度も何度も話し合いを重ねて、時間をかけて信頼関係を構築している。

 第2層協議体づくりにも継続して支援したい。(鶴山 芳子、窪田 健二)

アドバイザー派遣事業に協力

市川三郷町(山梨県)

8月19日

 山梨県のアドバイザー派遣事業を活用した市川三郷町での1回目の支援がオンラインで行われた。参加者は行政、社協(SC3名)、県、当財団。同町は昨年11月に支え合いフォーラムを開催し、そこで手を挙げた住民18名を中心に今年1月・3月に旧町単位で第2層協議体を立ち上げることを目的に勉強会を開催。今年度は第2層協議体ごとに「支えあいを考える会」として話し合いを2回行っている。次回、3回目の勉強会を3地区合同で行う予定で、その内容等について協議し、財団から助言を行った。
 町としては3年程度の計画で、第3層が3か所ほどできればいいと考えており、エリアをどうするか、住民にどのようにして主体的にやってもらうか等が課題。鶴山より、第2層協議体の機能についていくつかの事例を紹介し、多様なやり方があることを伝えた。また、第2層協議体のある3地区の状況を確認したところ、勉強会に来た人は住んでいるところもバラバラ、人口が多いので第2層のエリアを小さく絞ってもいいのではないか、想いをもっている人は多いがつながっていない、山間地で移動距離が長い、若い人が参加してくれるといい、等の意見が出た。
 鶴山より、行政は方針や必要性の説明、提案をし、決めるのは住民ということを継続して言っていくことが大切、と説明。方法案として、
・グループワーク等で他地区と交わる。
・すでに活動している地区に話をしてもらう。
・第3層で活動している人に話してもらう。
・具体的なテーマ、事象を取り上げる(より自分事になる)。
・イベント的に若者との交流を提案してみる。
等を提案した。
 3地区合同勉強会は9月または10月に実施予定。(鶴山 芳子、窪田 健二)

(本稿担当は、岡野貴代、窪田健二、鶴山芳子、目﨑智恵子)