活動報告

北から南から 各地の動き

さわやか福祉財団では全国各地の助け合いの創出、
住民主体の地域づくりの推進を支援しています。
その取り組みの一部をご紹介します。

2024年5月1日~5月31日分

SC=生活支援コーディネーター
3ステップ=ステップ①体制づくり、ステップ②ニーズと担い手の掘り起こし、ステップ③助け合い創出

SC研修・情報交換会等に協力

大野市(福井県)

5月16日

 大野市は公民館圏域単位での第2層協議体設置に取り組んできており、今年1月に和泉地区に協議体が誕生して全8圏域に設置された。今回、新しい協議体の担当や人事異動等で新たにSCになった人などを対象にした市主催のSC初任者研修が実施され、当財団も協力した。
 少人数の研修であったため、講義の後、質疑応答という形ではなく講義内容を区切りながら意見等を求めていく対話型で進めた。講義では、住民主体の活動の意義と効果、地域支援事業の概要、住民と信頼関係を築き住民の力を信じることの重要性などを説明した。
 研修終了後には、SCが情報共有する場として毎月開催されている「SC定例連絡会」が実施され、今回は財団もアドバイザーとして参加した。担当SCからの各圏域の取り組み状況の報告に加え、ニーズ把握の実施方法と結果の活用、居場所立ち上げ後の取り組みなど、具体的な課題も提示され、行政も含めて意見交換を行った。(髙橋 望)

和歌山県

5月20日

 和歌山県SC実践研修に講師として協力した。研修協力に至った経緯は、和歌山県の事業担当である長寿社会課の遠藤傑課長と鶴田圭吾氏が、当財団の「いきがい・助け合いオンラインフェスタ2023」の群馬県高崎市の事例を視聴し、和歌山県でも事業の基本部分を再確認する必要性を感じたとのことで、事業の基礎と同フェスタの高崎市事例を中心とする研修の講師依頼をいただいたもの。
 同県は、鶴田氏が担当になった2021年度から「高齢者の助け合いの仕組みづくりによる生きがいづくり」事業として、自治会などの「顔の見える」関係の中で、日常生活の困りごと(ニーズ)とその担い手となる高齢者を把握し、マッチングを行い助け合う仕組みづくりを進めることを目的として事業を推進している。その取り組みとして、21年度から年3回、講演会とグループワークを実施。加えて、生活支援専門アドバイザーによる伴走支援を実施している。専門アドバイザーは、和歌山県のさわやかインストラクター市野弘氏・紙谷伸子氏・高林稔氏、NPO法人全国コミュニティライフサポートセンター(CLC)、NPO法人全国移動サービスネットワーク。支援内容は、規範的統合、協議体立ち上げ・運営、資源把握、支え合いの仕組みづくり等である。県内30市町村での派遣回数は、21年度25市町54回、22年度27市町61回、23年度26市町村60回となった。
 今回のSC実践研修にも全市町村が参加。SCだけでなく、行政職員や社協職員等の関係者を含め129名の参加があった。研修の流れは、まず当財団より「SC・協議体の機能と役割」「資源開発へのプロセス ~住人同士でできる移送支援~」について話した。結果だけでなく、プロセスを共有することに重点を置き、住民主体の生活支援一体型の移動支援の事例も動画を含め情報提供した。熱心にメモを取る参加者も多く、グループワークでは積極的に話し合う姿に感動した。1つでも情報を持ち帰り、できることをやってみようと考えるきっかけになればと、事業の基礎とオンラインフェスタの高崎市の資料を使い、ポイントを押さえながら話を進めた。
 鶴田氏は全市町村に訪問ヒアリングを実施。各市町村で助け合いが広まるように、市町村の状況に合わせた内容の研修を行い、各地で始まっている活動の立ち上げまでのプロセスや、県からの情報等を盛り込んだ「きいちゃんのいきいき支え合い通信」を発行し、県のホームページでも閲覧できるようにしている。
 今年度は、遠藤課長も県内の地域支援事業の取り組みについて、全市町村に訪問し、ヒアリングを実施した和歌山県。市町村の課題をいち早くキャッチし、実践に結び付けられるような研修とアドバイザー派遣を活用し、きめ細かい伴走支援を行っている。
 研修終了後、参加者から「今回の資料を基にSC同士で復習を行いたい」と前向きな声が聞かれた。今後もさわやかインストラクターと連携しながら必要な支援を行っていく。(目﨑 智恵子)

協議体の活動・編成等に協力

蓮田市(埼玉県)

5月13日

 蓮田市で「高齢者になっても暮らしやすい地域を考える」ワークショップの第2回が開催され、当財団も引き続き講師を務めた。参加者は79名。協議体の学び直しと助け合いに関心を持つ新たなメンバーを増やすために、同市ではこのワークショップを企画。ボランティア養成講座、介護予防サポーター養成講座修了者への案内や、広報誌でも周知し、今回も幅広い層の参加があった。
 前回は目指す地域像と地域課題がテーマだったが、今回は、地域課題解決のために自分たちができることを考え、具体的な内容を話し合うことで協議体のイメージを体感してもらった。
 地域ごとに分かれ全18グループで話し合い、発表では各中学校区を代表して5グループが発表し、次のようなアイデアが出た。
 平野中学校区は、ごみ出しの課題に対し、ごみ出しができない人の把握とごみ出しに協力してもよいという人を把握するためのアンケートから始める案が出された。また、利用者には安否の目印を掲げてもらうことで、ゆるやかな見守りにつなげていきたいという。
 黒浜西中学校区は、自治会の脱会者が増え地域住民同士が交流の機会がないという課題に対し、高齢者の交流の場を月1回から初め、様子を見ながら開催回数や時間を検討していくなどし、まずはやってみることから始めたいという案が出された。
 黒浜中学校区は、地域間の交流がないという課題に対し、自治会館で月2回程度の茶話会を実施する案が出された。体を動かす、食事会、おしゃべり会などを交え、自治会に入っている・いないに関係なく参加できる仕組みとしたい。また、参加者が固定されてしまう傾向があり、こちらから気になる人を訪問する活動も行っていきたいという。
 蓮田中学校区は、声かけ活動を行い、顔の見える関係づくりから始めていく案が出された。その後に、ごみ出し、買い物代行などの生活支援にもつなげていきたい考え。
 蓮田南中学校区は、これまで単発で実施したボッチャや講演会等を、お寺を開催場所として定期的継続的に実施していく案が出された。また、定期・継続開催により、その場を相談窓口として、簡単な困りごとの生活支援にも取り組んでいきたいとのこと。
 財団からは発表へのコメントを行うとともに、こうした活動を具体化していくためにぜひ話し合いを続けてほしいと話し、協議体への参加を呼びかけた。第1層SCからも、協議体に参加したいと考えている人はアンケートで参加意思を示してほしい旨を伝え、あらためて協議体への参加を呼びかけた。
 今後は協議体への参加希望者を中心に第2層協議体を再編し、新たなスタートを切る予定。今後の蓮田市の第2層協議体の動きに注目したい。(岡野 貴代)

江東区(東京都)

5月28日

 江東区で第2回「支え合い大島東ワークショップ」が開催された。参加者10名。4月の第1回ワークショップでは目指す地域像と地域課題がテーマだったが、今回は地域課題解決のために自分たちができることを考え、具体的な内容が話し合われた。
 SCから第1回の振り返りを行った後、当財団より前回講義の振り返りを行い、なぜ助け合いが大切なのかをあらためて確認し、近い地域ごとに分かれてグループワークを実施した。全体発表では、住民ができる地域に必要な活動として、次のようなアイデアが発表された。
 1グループでは、困っている人の意見を聞こうと目安箱設置の案が出された。できるところから始めていこうと、マンションなど集合住宅の管理人室での設置等から始め、生活の困りごとと同時に協力できる支援内容も寄せてもらい、困りごとと担い手の両方を掘り起こしていく。
 2グループからはまず、すでに行っている「いきいき体操」の集いの場での工夫が紹介された。新しい参加者が来ると紹介タイムを設けたり、参加のお礼のレターをポストに入れるなど、新しい人が参加しやすい工夫を行っているという。そうしたつながりから実際に生活支援を行った例もあるとのこと。今後は、困りごとの声を上げやすい環境をつくろうと、助けてもらった人の喜びの声を紹介して、遠慮なく「助けて」と言えるようにしよう、というアイデアが出された。
 3グループでは、いつでもつながりがつくれるよう、毎日午前中に行う小規模公園でのラジオ体操を集いの場とする案が出された。子どもから高齢者まで誰でも参加でき、犬などを連れての参加もOKとして、ペットを介したつながりづくりなど、体操に興味がなくても参加しやすい方法も検討した。
 今回のワークショップを行った大島東地域は、江東区の中でも高齢者が多い地域だが、そうした地域でも自分たちができる助け合いがさまざまあることに気づきを得たようだ。
 最後に、目指す地域像に向けて自分たちでできる活動を具体化していきたいという思いを持った人は、今後は協議体に参加して話し合いを続けてほしいと話し、まとめとした。
 今後は、協議体への参加希望者のほかに、地域のキーパーソンにも声をかけ、6月中に第2層協議体を発足する予定。都心部で、勉強会から新たに発足する第2層協議体。今後の動きに注目したい。(岡野 貴代)

潮来市(茨城県)

5月30日

 潮来市で第2層協議体編成に向けた住民説明会が開催され、制度説明と事例の紹介など情報提供で協力した。この企画に向けて同市の関係者は、互助を基本にした活動創出ができる仕組みとして、協議体を機能させることを強く意識してきた。そのため、住民に対しても事前のヒアリングを実施して、関心を持った人が参加できるように配慮するなど、丁寧に準備を進めてきた。その上で、説明会の最後に構成員として参画する人をアンケートで募った結果、地域への前向きな意識を持つ人たちの記名を得て協議体を編成することができた。
 今後、同市の協議体は毎月情報共有を実践していく予定。(長瀬 純治)

認知症見守り声かけ訓練に協力

岬町(大阪府)

5月17日

 岬町第1層協議体で昨年から企画してきた認知症見守り声かけ訓練に、当財団が講師として協力した。この企画は、認知症の人を地域の中でお互い様で支え合える関係づくりを目指して、徘徊時の早期発見や保護時における通報の対応策、地域住民と多職種団体等との関係性を築くことが目的。警察や医療・介護関係者も協力し、住民など約60人が参加した。
 当日は2つのモデルコースをつくり、4班に分けて各コースにポイントを4か所設け、参加者が実際に声かけを行った。認知症の当事者役などは関係者が行い、住民は徘徊している場所の近くにある役場、農協、社協等につないだり、電話で家族や警察に連絡するところまで行い、たくさんの気づきと課題も見つかった。
 財団からまとめとして、普段からのつながりや小さな気づきを共有し仲間を増やしていくことの大切さを、事例も含めて話した。この訓練は、昨年の協議体で認知症のテーマで話し合いが進む中、群馬県高崎市で実際に行った徘徊見守り訓練の事例提供からもヒントを得ている。
 次回の第1層協議体で今回の気づきや課題を共有し、できることを探し、助け合いがさらに進むよう検討していく。
(目﨑 智恵子)

在宅福祉員対象の研修会に協力

秩父市(埼玉県)

5月29日

 秩父市で「秩父市社会福祉協議会在宅福祉員連合会会員研修講演会」が開催され、当財団が講演。同市社協在宅福祉員連合会の会員約150名が参加した。
 講演では、地域での助け合い実践者である在宅福祉員に向け、なぜ助け合いが大切であるかを話した。また、見守りによる危険や困りごとの早期発見とあわせて、困った人が声を上げられる場をつくっていくことも大切であると話し、事例として居場所を紹介し、定期的に通える場があることで、「最近、あの人来ていないね」といった自然な見守につながる、顔の見える関係から助け合いに発展するといった居場所の効果を伝え、見守り活動の一つとして参考にしてほしいと締めくくった。
 同市は面積が広く、在宅福祉員が一堂に会する機会は少ない。今回の講演を機に、地域とのつながりづくりの大切さにも気づき、さらなる安心安全な地域づくりにつながることを期待したい。(岡野 貴代)

アドバイザー派遣事業に協力

北名古屋市(愛知県)

5月18日

 北名古屋市では、小地域福祉ネットワークの充実、地域の支え合いを進めている。市内26支部での地域の特徴に合った活動を展開してきたが、さらに住民主体の協議体活動を展開し、地域ごとの生活課題を抽出しながら助け合いを広げていこうと、10小学校区に振り分け、まずは支部長や民生児童委員など地域の役の人たちの理解を目的に地域ワークショップを一昨年から続けてきた。今回は鴨田、白木の小学校区を対象に実施し、約20人の住民が参加。なお、このワークショップ後は第2層4圏域(包括圏域)で協議体を開催。本ワークショップに参加した人たちが地域に呼びかけて、第2層協議体としての話し合いが始まる。今回の参加者の住む西部南包括圏域では、6月に「はじめのいっぽ」というタイトルで協議体が始まる。
 市社協会長のあいさつに続き、第1層SCがワークショップの目的を説明し、ワークショップを行った。
 ワークショップ第1部は当財団が「助け合い体験ゲーム」を実施、第2部では財団が講義を行った。内容は、なぜ助け合いが必要か(SCと協議体の役割)、協議体の事例やワークショップの様子、協議体の機能、住民同士が話し合う必要性、協議体から生まれる助け合いなど。
 その後、支部ごとの課題についてグループワークで話し合ってもらい、発表で共有した。
 まとめとして財団よりコメント。新住民と旧住民の交流、若い世代は困っていないなどの声もワークショップで上がったため、地域性として住宅が密集している・家が点在している、交通公共機関が充実している・していない等の違いはあるが、実は地方でも都市部でも悩みは同様だったりする。地域での住民同士が本音で話し合う機会はあまりない。過疎が進む地域で若い世代も入って話し合ってみたら、学生がグループワークで「地域のことが分からないので相談したいが、誰にしていいか分からない」言い、高齢男性が「いつでも相談して」と発言。また子育て支援グループが「それなら子育て支援の会の場所を使ってくれれば、子育て中の母親や子どもも喜ぶ」という会話になった。地域性は異なるが、同じような困りごとも意外と多い。話し合いの場が必要。今日は短時間でも良いアイデアが出た。地域の中でも、役をしている人だけでなく「この人は」という人、やる気のある人に声をかけ皆さんも協議体に参加してほしいと呼びかけた。
 その後、第2層SCより6月の第2層協議体の開催についてのお知らせと参加呼びかけを行い終了した。
 終了後の関係者との振り返りで財団から、意識して“世話焼きさん”のような人に声をかけるといいかもしれない。1人ではおせっかいを焼きづらいが、仲間ができると力を発揮する。また、地域の情報をたくさん持っている可能性もある、と伝えた。(鶴山 芳子、窪田 健二)

(本稿担当は、岡野貴代、窪田健二、髙橋望、鶴山芳子、長瀬純治、目崎智恵子)