「地域助け合い基金」助成先報告

 堺国際市民劇団

大阪府堺市堺区 ウェブサイト
居場所その他

助成額

150,000円2021/12/10

助成⾦の活⽤内容

インクルーシヴ演劇ワークショップと公演事業。
世代や障がいの有無、国籍など無関係に誰もが気軽に芸術に触れ、自分らしさを発見、取り戻すことで、今後の人生のポジティブな影響を及ぼす演劇ワークショップと公演活動を行います。
講師は、海外の演劇祭で受賞歴多数と活躍し、被災地や先住民キャンプ、アジアの子どもたちへの演劇ワークショップでも高い評価を得ているTheatre Group GUMBO代表の田村佳代先生。JAC出身で千葉真一最後の弟子でもあり、子ども達への指導に情熱をそそぐアクションと殺陣指導の映見集紀先生など。個性を大切にする先生方ばかりです。
現在、芸術を必要としていながら、芸術活動と断絶している人達に対して、セーフスペースとしてワークショップの場を提供したいと考えています。
公演は、第一部が堺の歴史を題材にした「さかいものがたり」。自分の暮らしている地域を題材にすることで、地域に生きる誇りを感じてもらうという目的もあります。
第二部がミャンマー人アーティストを招いての「ミャンマーフェスティバル」。地域で暮らす外国籍市民と日本人が一緒になって楽しめるお祭りを想定しています。

活動報告

インクルーシブ演劇ワークショップと「さかいものがたり」公演を行いました。
さまざまな障がいを持つ人たちや、外国籍の市民、子供から若者、現役世代、シニアまでそれぞれ背景が違う人々と演劇ワークショップを行うことができました。舞台経験についても、まったくの初心者から、久しぶりに舞台に立つもの、プロとしての活動を目指しているものが含まれていました。
ワークショップでは、そうした違いを踏まえて、田村花預先生(Theatre Group GUMBO代表)は、海外のアートセラピーの考え方を取り入れ、障がいも個性ととらえ、舞台の上での強みにしてく指導をされました。自分らしさが活かされていく体験というのは、多くの人にとってこれまでになかった楽しく興奮する経験です。次第に完成していく作品は、まるで形の違うピースの特徴が絶妙に組み立てられ、最初からそのように完成されることが予定されているパズルのようです。稽古場で流れる空気は熱気にあふれたものとなりました。

ワークショップ参加のメンバーは、12月の公演を目指しながら、9月にはミャンマー応援企画として「民衆の歌」ミュージックビデオの撮影参加や、弊劇団が主催/堺市が後援する「堺水掛祭~ミャンマー平和への祈り~」での舞台参加を行うことで経験を積むこともできました。こうして活動に幅をもたせることができたのも、貴財団の助成金があったからこそでした。

集客は課題でした。日本には気軽に演劇を見に行くという文化はなく、コロナ後は劇場に足を運ぶことを躊躇される方も増えました。
今回は、生活支援コーディネーターとも接触して、堺市内の障がい者施設のネットワークに公演情報を流してもらうことができました。問い合わせがあり集客へとつながりましたが、中には付き添う職員の手配ができずに観劇を断念された方もおり、外出ひとつ簡単ではない方たちを集客ターゲットにすることの難しさを感じることとなりました。

公演会場は、本格的な能舞台である堺能楽会館。日本でも珍しい個人所有の能舞台で、会場として使用できたのはもちろん助成あってのこと。公演の趣旨を知り館主にも共感して、お貸しいただくことができました。私たちも、地域の宝のような会場を使い、その素晴らしさを能楽ファン以外にも知っていただくことができました。

公演は、「乗り越える」をコンセプトとして、さまざまな当事者が自身や社会が持つ課題をどうやって乗り越えるのか、ワークショップの成果を発表することになりました。高次脳機能障害を持つ元プロダンサーによるショートダンスショーを始め、国境を越えた恋愛、国連からも問題があると指摘されている精神病患者の強制入院、ジェンダー問題、太平洋戦争の大空襲で被害を受けた堺の歴史を踏まえて世界中で今も人々を苦しめている「戦争」など、様々なテーマを扱ったパフォーマンスを披露しました。
多くのお客様に満足していただけたようで、終演後には多くの感想が寄せられ、その内容も熱いものでした。
「互いの生きづらさを認め、得意な分野で自分を輝かせていることに共感した」
「ひとつひとつの題材(問題)について自分なりにもっと勉強したいと思います」

舞台経験の少ない人が多く、またバックボーンもそれぞれの人々が一つの作品を作って公演を行うのは簡単なことではありませんでしたが、沢山の感動の声をいただくことができ、活動を行って良かったと心から思うことができました。

今後の展開

私たちの社会には、目に見えないだけで、様々な人々が暮らしています。マジョリティでない人々が生きていく上で障がいを感じるとしたら、それは差別や偏見、社会制度の不備によるものであって、障がいとはむしろ当事者個人ではなくその外、社会の側にあるのではないかと考えます。
社会として異質なものとどう向きあい、受け入れていくかというのは、今後ますます重要な課題となっていくはずです。そこで、堺という土地は、歴史的にも海外との貿易で発展したこともあり、珍しいもの、異質なものは「良いもの」であるという考えがあり、変り者、よそ者に寛容な土地です。地元の人もあまり認識していない、この地域が持つ特性を可視化してアピールし、堺だけでなく他の地域とも連携し外へと広げていくことも重要です。

アートはこうした問題を知識としてではなく、心に訴え、感じてもらうことができます。当事者たちの本気の思いを、観客の皆さんは受け取ってくれました。

今後は、もっと地域の中へアートを届ける活動をしていく必要があると感じています。今回つながることができた団体や施設など、地域で活動されているところへ、特に私たちと同じような当事者がいる場所へアートを持っていきたいです。私たちの公演に興味を持たれた方がいたら、ぜひ声をかけていただきたい。舞台から社会を変えていく活動を続けていきたいと考えています。

添付資料