「地域助け合い基金」助成先報告

一般社団法人 北海道ピアサポート協会

北海道札幌市白石区 ウェブサイト
居場所生活支援その他

助成額

150,000円2022/05/12

助成⾦の活⽤内容

ピアサポ―ターとは「自身の障がいや疾患を通して得た自分の経験を活かして,ピアサポートを提供する人々」のことであり,ピアサポーターによる支援は利用者とピアサポーターの双方のリカバリーに寄与することが立証されている.令和3年度の障害福祉サービスの改定では,「ピアサポート体制加算」「ピアサポート実施加算」が新設され,今後のピアサポーターの雇用の拡大とその定着が期待されている.しかしながら,これらの領域において,障がい者の雇用が促進されているとは言い難く,障害福祉サービスの事業者のピアサポーターに関する認識や,ピアサポーターを雇用しない理由については明らかになっていない.そのため,障害福祉サービス事業所に向けて,「ピアサポーターに関する認識「ピアサポーターの雇用の課題や条件」等のアンケート調査の実施を計画している.ピアサポーターを雇用していない事業所の課題を明らかにし,地域の事業所や行政に向けて発信することで,地域共生社会の実現に向けた対応策を考え実行に移すことにつながる.また,すでにピアサポーターを雇用している事業所については,雇用時の工夫や取り組みを明らかにすることによって,ピアサポーターの雇用時のモデルケースとしての啓発が可能になる.

活動報告

北海道ピアサポート協会では、自身の病気や障がいの経験を活かして働く“ピアサポーター”の雇用促進と定着を目指すことを目標の1つに掲げています。ピアサポーターは、同様の経験をもつ立場から、同じような病気や障がいもつ人々をサポートすることが出来るため、病気や障がいによる辛い経験や苦労、生活のしづらさなどを分かち合うことを可能にします。医療や福祉の現場において、病気や障がいの経験をもつ当事者が、「自分自身も支援の現場で働きたい」「ピアサポーターになりたい」と希望することが増えているにも関わらず、北海道内においてピアサポーターが働ける場所は少なく、ピアサポーターの認知も進んでいない現状にあります。そのような中、令和3年度の障害福祉サービスの報酬改定では、ピアサポート実施加算やピアサポート体制加算が新設されました。本協会においても、1人でも多くのピアサポーターが働く場所を見つけ、社会で活躍することを願い、活動を続けています。そのピアサポーターの活躍が、同じような病気や障がいをもつ人の力になることを信じてやみません。

今回の助成金は、北海道内の障害福祉サービスにおいて、ピアサポーターがどれくらい活躍しているのか、ピアサポーターの雇用の余地はどれくらいあるのかについて明らかにするためのアンケート調査とその啓発のために活用しました。アンケート調査は、北海道内のピアサポーターに関わる加算の対象となる全施設に対して実施したため、あらゆる事業所に「ピアサポーター」という言葉を知らせ、その理解を促すことができたと考えます。しかしながら、ピアサポーターという言葉を認知していない事業所もあり、ピアサポーターが社会にまだ浸透していないことを痛感させられました。

アンケートの結果から、雇用していない事業所からは雇用しない理由として、「ピアサポーターの価値や役割についてわからない」「ピアサポーターを受け入れる余裕がない」など、ピアサポーターを雇用することに対する生の意見が得られ、その具体的な課題を目の当たりにしました。一方で、ピアサポーターを雇用して良かった点として、「当事者目線での対等性を伴う関係性の構築が可能である」等の声もあり、改めてピアサポーターが活躍する意義を確認できたことから、それが活動へのモチベーションになりました。また、ピアサポーターの雇用を前向きに考えている事業所やピアサポーターを実際に雇用して協働している事業所に少ない数でしたが出会うことができました。このような雇用に前向きな事業所の実践について、ピアサポーターに関する知識が少ない事業所等に啓発・啓蒙していくことが重要だと考えています。今後は、このような事業所の雇用者とのつながりを持ち、働くことを希望するピアサポーターとのマッチングができるように、更なる事業展開を進めたいと考えています。

活動での苦労としては、アンケート送付件数の多さから封入や発送作業が挙げられました。北海道ピアサポート協会の研究事業のメンバーは別に仕事を持っているため、仕事後や休日を利用してのやりくりとなりましたが、就労継続支援B型PEER+designのメンバーとも協働し作業を進めることができ、期限内に調査を実施することができました。研究事業のメンバーは、支援職・研究職・当事者など様々ですが、お互いの立場より意見を述べ、多角的に学びあうこともできました。また、生活支援コーディネーターとの連携、障害者ピアサポート研修との連携を含め、地域や社会と連携する難しさも実感しました。どのようにしたらピアサポーターの良さが伝わるか、ピアサポートに関心を持ってもらえるかは未だに課題となっている部分です。ですが、地域との連携なしに、ピアサポーターの雇用促進と定着はできないので、今回の調査をきっかけにつながりを拡大していきたいと考えています。

今後の展開

地域の方にアピールしたいこと
 障がいの有無を問わず、地域住民の方・障害福祉サービスにおける事業所の方が、少しでもピアサポーターと一緒に働くイメージを持ち、ピアサポーターを身近な存在だと感じることを目指しています。本調査で強調されていたピアサポーターの特長を以下にまとめます。
1)ピアサポーターは、自身の経験を活かした対等な目線での支援を展開することができ、これは専門職だけでは実現できません。
2)ピアサポーターは専門職では行き届かない支援を可能にします。ピアサポーターが、支援チームの一員として活躍することで、当事者目線に立った支援を展開することができます。
3)ピアサポーターと一緒に働く苦労が生じることがありますが、すでに持っている事業所のノウハウを生かすことで、ピアサポーターの魅力を引き出すことができます。
4)ピアサポートから作られる居心地の良い雰囲気は、事業所で働く方々、事業所を利用する方々など、あらゆる人に非常に良い影響をもたらします。
5)ピアサポーターの数が増えるだけではなく、ピアサポーターが当事者としての力を発揮できる職場が増えることも重要だと考えます。

今後の目標
 今後もピアサポーターの雇用拡大・定着に向けて下記の目標をもつ活動を継続していきます。
1)更なる分析と追加調査
ピアサポーターの雇用に関するアンケート調査の中で明らかになった事業所の意見を分析し、ピアサポーターが活躍するために必要な課題や条件について考察し、更なる理解を深める予定です。また、インタビュー調査への協力の同意が得られた事業所にインタビューに伺い、ピアサポーターを雇用し、その人らしさを発揮しながら働くための方法を明らかにしていく予定です。
2)障害者ピアサポート研修における啓発・啓蒙活動
令和5年度より開催される障害者ピアサポート研修の開催・運営に北海道ピアサポート協会は携わる予定です。本調査結果をこれからピアサポーターとして活躍する方々、およびピアサポーターを雇用する方々を対象に、リーフレットを用いた説明を行い、啓発・啓蒙を行う予定です。
3)これからピアサポーターを雇用する事業所へのアプローチ
すでにピアサポーターを雇用している事業所の取り組みや事例について、これからピアサポーターを雇用しようとしている事業所に紹介し、雇用時の工夫や問題への対応策などの共有を図っていきます。

 本協会の活動、ならびに本助成での調査結果については、下記のホームページに更新する予定です。是非ご確認をよろしくお願いいたします。https://www.hokkaido-peersupport.net/

添付資料