「地域助け合い基金」助成先報告

一般社団法人 ちろる

福島県大玉村 ウェブサイト
居場所見守りその他

助成額

148,000円2022/07/22

助成⾦の活⽤内容

地域のつながりが薄くなっていると言われて久しいです。そこで地域の繋がり、特に異世代でのつながりをつくるために、学生と高齢者が一緒に食事を作って、一緒に食べて、交流を図るような学生食堂を実施します。
ある程度年配の方からは学生は地域にいても、お互いに挨拶することもなくつながりが全くないという話を聞きます。そこでただ高齢者と学生を集めて茶話会を実施しても、なかなか交流がスムーズにいかないと思いますので、料理というツールを活用して、高齢者が学生に料理の仕方を教えたり、今風の料理を学生が高齢者に教えたりしながら、会話がスムーズに生まれるような働きかけをしていきます。
ただしコロナ禍ということもあるので、新型コロナウイルスの流行状況を見たうえで、感染予防のために会食形式ではなくて、お弁当形式で実施する場合もあります。

活動報告

私ども一般社団法人ちろるでは、地域助け合い基金の助成を受けて、2022年10月から2023年9月まで、毎月1回、全12回の学生食堂をオープンしました。
東日本大震災及び福島第一原発事故から2022年10月の学生食堂オープン時点で11年半が経過していましたが、まだ生まれ育った地域が帰還困難区域に指定されていて、自宅や慣れ親しんだ土地に帰りたくても帰れない方=避難者が多数います。
福島県二本松市にも浪江町を中心に多くの避難者が住んでおり、市内には4箇所の災害公営住宅があります。災害公営住宅が出来て、すでに7年から8年(4箇所の災害公営住宅は同時期に建ったわけではなく、1年程度の差があります)が経過しております。その間に避難元、避難先の社会福祉協議会を始め、県内外のNPO団体や個人ボランティアの協力によって、災害公営住宅内の横のつながりはある程度強くなりました。
しかし、災害公営住宅間でのつながりや、地域住民とのつながりはまだまだ道半ばの状態です。まして、災害公営住宅で生活をしている方は比較的年配の方が多いのですが、他の年代、特に若者世代とのつながりは全くというほどありませんでした。
そこで福島大学の災害ボランティアセンターの学生達に協力してもらって、当初は学生と災害公営住宅の住民や地域住民が一緒に食事を作って、一緒に食べて、交流を図る場として「学生食堂」を企画しました。しかし残念ながらコロナ禍ということもあり、一緒に食事を作ったり、食べたりしたのでは新型コロナウイルスの感染リスクが高くなってしまうので、学生達が食事を作って、お弁当形式にして食事を渡すようにして、受け渡しの際に交流を図るというスタイルで実施することになりました。
学生食堂の日には10時から災害公営住宅若宮団地(以下、若宮団地)の集会所に学生に集合してもらい、調理を開始します。12時ぐらいから食事をお渡ししますと若宮団地や他の災害公営住宅の方、地元住民に周知をしていたのですが、12時から食事を取りに来たのは最初の1、2ヶ月ぐらいで、3ヶ月目以降になると、団地の方や他の災害公営住宅の方、地元住民達が、ほぼ調理開始と同じぐらいからちらほら集まり始めるようになりました。
地元住民の方から「自分の住んでいる所に災害公営住宅が出来て、見てはいたし、前も通っていたけれども、なかなか中に入る機会もなかった。だから学生食堂が始まって、月に1回でも集会所に来れるようになったのは喜ばしいことだ。何かあった時に協力しようにも、まずはお互いに顔の見える間柄にならないと協力もなにもない。だからこうして団地の方と交流出来るようになったのは、同じ二本松市で暮らす者同士うんと良い事だ。学生達からも若いパワーをもらえて、元気になるから、毎月来っからない」というお言葉を頂いたのが印象的でした。
学生達にとっても震災から11年以上が経過し、当時の様子を記した様々な書籍等も発行されているので、知識として当時の様子を学ぶことは出来ても、震災当日の様子や原発事故が発生してからどのように避難したのか、生活の場所はどのように変遷していったのか、当時はこんな事に困った、大変だった等の避難者だからこそ自分が経験してきた、書籍では学べない臨場感に富んだ話を聞く機会になっていたようです。
当初の予定では学生食堂を学生と避難者を始め、地元の住民との世代間の交流の場と考えていたのですが、自然と震災の記憶を風化させない為のつながりの場にもなっていたようです。
学生食堂を通してせっかく出来た災害公営住宅間のつながり、災害公営住宅で生活をする避難者と地元住民の同じ地域で生活をする者同士のつながり、そして学生との世代間でのつながりを助成期間が終了したから学生食堂を終了するのではなく、若宮団地からは会場費はいらないから継続してという要望を頂いていますし、参加者からは食事代いくらでも良いから取るようにして引き続きやってほしいというお声も頂戴しています。つきましては、今後もつながりの維持・拡大の為に学生食堂を継続、発展させていきたいと考えています。

今後の展開

今回の活動期間で若宮団地の周辺にお住いの地元住民の方にも、学生食堂を通して団地内に足を運んでいただくきっかけになりました。しかしまだまだ参加してくださった方は地域の方のほんの一部です。ですから、より多くの方に学生食堂に足を運んでもらって、団地での暮らしがどんな感じなのか、どういう人がそこで生活しているのかを自分の目で見て、交流して実際に知って頂きたいです。
中には未だに「避難者の人は何百、何千万も東電からもらって働きもしないで、悠々自適な生活をしている」などという偏見をもっている人もいます。その偏見はメディアで賠償額〇千万円、追加賠償〇百万円と言った金額の部分だけを切り取った情報に過ぎません。中には賠償金で悠々自適な生活をしている人もいるのかもしれませんが、それは極一部で、それ以外の人は避難者や地元住民と言った言葉の名称の違いなく、普通の生活をしています。
ですから同じ地域で生活をする者同士、街中で顔を合わせたら挨拶をする、立ち話をするような関係性がどんどんと出来てくるようになれば良いと考えています。
またコロナ禍ということで地元の高校に協力依頼をしたところ、「学外での活動は自粛している」との回答だったので、今回の学生食堂の学生は大学生のみとなったのですが、コロナウイルスが第5類に分類されるようになって、全世代がマスクをしたり、しなかったりすることや人によってはワクチン接種をすることを除けば、コロナ前までの生活に戻ってきたので、高校生にも学生食堂の参加を呼び掛けて、活動の輪を広げていきたいと考えています。
更に活動の継続性という面では、支出面をいかにして抑えるかが重要になって来るので、地域の方々が廃棄する食材や、農家の方も多いので作りすぎた野菜等を学生食堂の食材として利活用させて頂けるように、協力の輪が拡がってくれたら、活動にかかる支出を限りなくゼロに出来るので、持続可能な活動となります。
避難者間のつながり、避難者と地元住民のつながり、避難者や地元住民と学生の世代間のつながり、学生食堂の時以外でも顔を合わせたら挨拶や立ち話をするような関係性の構築に加えて、廃棄する食材や余った、もしくは売れ残った食材や野菜の提供があるとフードロス削減にもつながる、より有益な活動になると思いますので、この情報公開を通して、多くの方に学生食堂の活動を知って頂ければと思います。

なお、学生食堂の毎月の活動の様子は当法人のブログに詳しく載せております。
ヤフーでもグーグルでも、検索ワード「一般社団法人ちろる」で検索してみてください。
URK : http://www.chiroru2018.com/ です。
よろしくお願い致します。

添付資料