「地域助け合い基金」助成先報告

【個人】 黒川 宰

京都府宇治市
生活支援移動支援

助成額

145,000円2023/12/05

最終助成額

93,225円2025/03/21
(一部返金:51,775円)

助成⾦の活⽤内容

高齢化の進展により日常移動がより困難になり、近い将来買物弱者が大幅に増加していくことが予想されている。交通至便とされる宇治市でも、運転免許の返上と共に、食品購入だけでなく普段の外出にも不安を感じる高齢者が増加していくと考えられる。

そこで、将来の買物弱者化をできるだけ回避すること、心身ともに健康な生活をできるだけ長く維持することに貢献する仕組みについて地域生活者、福祉関係者、行政部門と協議を重ね、今回実地のモデル研究を2024年に3回実施することによって、その実現可能性を探ることにした。

住民が運転(無償運送)する,住民を送迎する、住民が生活支援をする、住民が運用するという、住民が主体となった独自の「お出掛け倶楽部」を実現できれば、既に宇治市においてもさまざまな取組みがある介護保険制度の適用を受けた生活支援サービスと組み合わせて、高齢者の心身の健康維持にさらに役立つ仕組みになるはずである。

今回の助成金は、実地評価のためのパイロットとなるモデル研究に必要な費用に充てる計画である。

活動報告

運転免許を返納した高齢者の移動をどう支援するかは全国的な課題である。

宇治市においてその解決に向けての市民発の特段の動きが見られなかった中、2021年から買物難民への対策という視点での検討から始めて、さまざまな視座からの話し合いを進めてきた。その過程で、お出掛け者に加えて運転者も市民が担うという新たな視点を採り入れることにした。お出掛け者と同時に運転者もボランティアとして参加できる「お出掛け倶楽部」という仕組みを目標としてイメージし、その実現可能性についての検討につなげてきた。

今回の助成金は2024年度に実施した実地モデルテスト(2024年3月、6月、10月の3回実施)の費用等に充当して、今後に向けたベース作りに向けて活用させていただいた。

テスト参加者は一般公募ではなく、既に市内で活動されている福祉活動の参加者に個別提案をしてチームを編成した。また、今回のテストで実施した評価調査は通常よく見られるアンケートの体裁ではなく、数値化比較を前提にしたかなり分量も多いものであったが、調査研究員として参加していただいた市民の多大な協力を得て多くの評価データを収集できた。

結果は数値化して、3回のテストの結果を一元的に示せるように工夫した。その結果計算した期待値幅の中で、テスト参加者の好評価率として、お出掛け者6名は72%、運転者5名は80%となった。即ち、「お出掛け倶楽部」を実現してほしい、という期待感を70~80%の方が抱いたということを示している。

この評価とは別に、参加者の声として、「久々に外出できて楽しかった」「今回は運転者として参加したが、お出掛け倶楽部ができたらお出掛け者として参加します」などの感想や期待も多く示されていた。

移動支援への対応は、運送に関わる法令を遵守して行う必要があるため、宇治市の交通担当部署には国土交通省近畿運輸局への事前報告などでご協力をいただいた。また、当初から宇治市、社会福祉協議会、また地域包括支援センターの参加もいただき、主として高齢者福祉の視点を軸にして本活動を進めてきた。

多くの高齢者が「移動」という面でもお互いに助け合い、お出掛けする人、それを支援する人が共に居場所をもち、役割を担い、つながりを感じられる仕組みとしての「お出掛け倶楽部」実現に向けて、今年から第2フェーズを始めたいと考えている。

今後の展開

高齢者が運転免許を返納した後、買物はどうしようか、どうなるのか、という不安を誰もが持っているのではないでしょうか。そのため多くの地域で、移動支援に関わるさまざまな取り組みが進められています。

宇治でもそのような声を耳にして、移動支援の問題について考え始めました。

タクシーを含む公共交通機関がさらに充実していけばいいのですが、全国的に今後そのサービスが拡充されていくことは殆ど望めない状況ではないかと思われます。ライドシェアもまだ部分的な動きに限定されているようです。一方で、高齢者の外出や人との交流は心身の健康維持に直結していると、特に医療、福祉の関係者は指摘されています。

このような課題解決に取り組むために、宇治市に住む私たちもここ数年検討を積み重ねてきました。その経過を踏まえて、昨年度「お出掛け倶楽部」という宇治市民発の移動支援の仕組みの実現可能性を評価しようと、さわやか福祉財団様のご支援をいただき、モデルテストを実施することができました。その結果、お出掛け支援への期待感は潜在的にはかなり大きいということを改めて実感しました。

「お出掛け倶楽部」では、お出掛け者と運転者、双方の役割を市民が担うという考え方を軸としています。どちらも市民、どちらも役割をもって、生きがいを感じ、つながりを拡げていけるという考え方です。

このような考え方を実際に具体化することが可能かどうか、実用化できるかどうか。まだまだ未知数は多くありますが、これから取り組んでいきたいと考えています。移動支援に関心をお持ちの方、また既に取り組まれている方との情報交流ができれば幸いです。よろしくお願い致します。

添付資料