「地域助け合い基金」助成先報告

 団地シルバー隊

京都府宇治市
居場所見守り生活支援配食・会食

助成額

150,000円2024/04/08

助成⾦の活⽤内容

西大久保団地は約1800世帯・3100名が住んでいる、京都府営住宅では最大の団地です。建設から約50年になりますが、住人は少子高齢化を象徴する典型的な世代構成になっています。高齢化率も45%を超えています。また、団地や共同住宅特有の「他人の生活には関りたくない」という住民意識もあり、住民どうしのつながりが薄い面があります。このことで、孤独死・災害時の対応・認知症者への対応等、団地内での意識の共有ができていません。これを少しでも改善するためには、住人間のネットワークを広げ、お互いさまの意識を高めていくしかないと思います。そのために、定期的にサロンを開設して、そのなかでの交流をとおして、住民の意識を「顔見知りから信用できる人」にしていくことから始めたいと思います。団地サロンを拠点にして活動を予定している内容は以下のとおりです。

①団地サロンを平盛デイホームで定期的に開設します。
毎月木曜日に「認知症予防ゲーム教室」「映画鑑賞会」「演芸・音楽を楽しむ会」「みんなで作って食べる会」「遺影撮影会」などを開催する。

②スタッフ体制が整えば、高齢者の定期的な安否確認を計画しています。

③スタッフで困りごとの生活支援を計画しています。

活動報告

団地サロンの活動は急速な高齢化がすすむ団地で、コミュニティの希薄化から孤立した高齢者のための居場所をつくることでした。居場所では高齢者が毎日を、何があれば健康で楽しく、地域で暮らせるかを考えました。

そこで取り組みのテーマを「健康寿命を維持すること」にして、運動・食事・楽しみ・勉強会などの活動をすることにしました。具体的にはこの一年間で、認知症予防講座・映画観賞会の定例化や終活・運動講座の開催などを実施しました。令和7年3月からは市内ではじめて、全国の自治体で取り組まれている「いきいき百歳体操」を毎週1回実施することにしました。また、4月には「人気のお花見ツアー」に希望者6人でバス旅行に参加して行きます。このように単に余暇時間を過ごすための居場所づくりではなく、いろいろな思いや考えを持った人が、選択して参加できる内容に挑戦しています。
 
取り組みをすすめるうえで、サロンの参加対象者を、地域で活発に動いている人だけでなく、家族中心の生活スタイルの人にどうしたら参加してもらえるかを考えています。また、仲良しクラブ的にならないように、顔が見える関係のなかで、適当な距離感を保つように気をつけています。しかし、具体的に参加者に「何がしたいか」「何ができたらいいか」を聞いても答えが返ってきません。そこで、例会の内容を毎回変えて
みんなの反応を見ながら、取り組みをすすめてきました。そこでわかったのはそれぞれの参加者が「どんな気持ちで来ているか」、「何に興味があるか」、「その人の価値観や人生観はどうか」などが次第に分かってきました。「来る者は拒まず、去る者は追わず」の気持ちで運営していくことにしました。そうした中で同じ価値観を共有したスタッフが固まってきました。

昨年秋から毎回参加しているひとり暮らしの男性から「この団地サロンにはまってしまって、例会に来るのが楽しみ」という声を聞きました。正にこんな人に参加してほしかったので、素直にうれしく思いました。また、最近ご主人を亡くされた人でこれまであまり地域でのつきあいがなかった方に、会への参加を呼びかけたところ、早速来てくれてそれから毎回参加されるようになりました。それと見たい映画のリクエストを募ったところ、古いモノクロ作品の希望がありました。その人にとってはたぶん、思い入れの深い映画だったのでしょう。幸い盤が手に入ったので、みんなで視聴しましたが、たいそう感謝されました。昨年12月にはボランティアで来場してくれたリコーダー隊の皆さんと参加者全員でハンドベルの演奏をしました。はじめての経験でしたが、みんな楽しく一生懸命演奏しました。このように参加者が一緒に同じ体験をすることによって、参加者に自然に連帯感が生まれています。 

 地域とのつながりは常に意識していますが、サロンの存在が地域にとってどんな役割をもつことになるのか、そのためには何をどうすればいいのか、を考えています。地域住民への発信の仕方・サロンの役割分担の仕方、個々の住民の役に立つことが地域貢献になることをかたちにしていく作業だということ。それは見えない住民の意向を感じ、サロン参加者の自発性を引き出し、取り組みを継続していくことであると思います。団地特有のゆるい連帯感のあるコミュニティのなかで、サロンが地縁とは関係なく、人のつながりでの頼れる存在になることが、安心して暮らせる地域に貢献することになると思います。

団地には地域に関して、管理者としての京都府があり、所属自治体としての宇治市があります。京都府には各住棟に管理人がおり、宇治市には地域委嘱組織として、民生児童委員や学区福祉委員がいます。ですがいずれも行政の補完的なことしかできていません。自治会の活動も組織の維持が精一杯で沈滞しています。これではコミュニティは育ちません。支援組織としての生活支援コーディネーターも、役割と職務の認識の共有が行政と住民にできておらず、自分たちでしか頼りになるコミュニティはつくれないことを自覚して、サロン活動を続けていきたいと思います。

今後の展開

団地サロンは主に京都府営住宅に居住している住民のためのサロンです。住まいの立地や居住者の入居条件など均一な生活環境のもとに暮らしています。住民の意識も他地域とは多少異なるところがあると思います。
それは
①すべて賃貸住宅で個人資産がないこと。住居専有部分以外はすべて京都府の行政財産であること
②2世代同居ができないこと。入居継承できる単身親子を除く。
住民の意識も
①高齢者の生活も比較的に気楽である…家賃が安いので年金でもなんとか生活できる。
②2,000戸3000人余が住んでいる大規模団地なので、他人との関わりが薄い、
③一小学校区を形成しており、隣接地域と地形的に区分けされている。
④入居要件に根差した住民意識がある意味強く、平等意識や自己保身意識が強い。
などの特徴が見られると思います。

高齢化率45%で、2世帯同居はできず、賃貸住宅の団地でこれからも高齢者が生活していくにはどうすればいいのか。これは地域課題でもあるが、老朽化と空き家が増加している公営住宅団地が抱える問題でもあります。管理する自治体にそれを求めても無理で、住民が自分のこととして考え、行動しなければ何も生まれません。一般的に賃貸住宅や集合住宅に住んでいる人は、地域への愛着やコミュニティへの関心がうすいと思われています。しかし、人生の終盤を迎え、50年近く暮らしてきた場所への思いは、若い時に抱いていた仮住まいの意識から、いつのまにか終の棲家へと変わりました。
「この地で死をむかえることになるだろう」と悟ったとき、自分がこれから団地でどう過ごすかを考えました。そして出した答えが「安心して死ねる場所づくり」でした。そのためには「何をどうすればできるか」を考えて挑戦してきました。たとえば、団地内全域に防犯カメラを設置したり、団地内の自治会向けに環境美化のための草刈りを実施したり、目に見えるかたちの活動に取り組んできました。それでもおなじ気持ちの通い合える人とのつながりがなければ、平穏で安心できる暮らしはできないと思いました。「同じ団地に住んでいる」という緩い地縁をベースに、もう少し親近感を深めたつながり(知り合い)づくりに取り組むことにしました。最初は管理自治体に、空き家を利用した常設の居場所づくりを要望しましたが、周辺住民の承諾を条件に、聞き入れられませんでした。また、地域包括ケアシステムの枠組みでの支援や生活支援コーディネーターの協力も要望しましたが、助成金での支援や交流会の開催のみで、一緒に取り組む姿勢が感じられませんでした。
宇治市内のサロンの交流会に参加しましたが、団地サロンの取り組みが目的・内容ともに明確で、高く評価されました。主催者から地域FM放送への出演打診もありました。これは今後の自信につながりました。また、同席した他の参加者から、私の言動に地域への熱い思いを感じるとの言葉がありました。また、団地の自治会をとおしての顔みしりだった人から、廊下灯のカバーの取り付けを依頼されました。以前電気店に頼んだところ5千円ほど請求されたとのことでした。早速修理したところたいそう感謝されました。この程度のことが気軽に頼める関係が、つながりづくりであり、ささえあいのベースになるものだと思います。サロン活動の輪を広げることが、地域のためにもなると信じて実践していきます。
イベント参加型のサロンではなく、自分事として自発的な内容で運営できるようにすることが、これからの課題です。いきいき百歳体操の参加者も10名になり、これからも増えそうです。宇治市内の他の地域にも広がってほしいと思います。また、サロンの会場が小学校併設の場所なので、児童との交流会も子供たちから元気をもらえるので是非やりたいと思います。

添付資料