「地域助け合い基金」助成先報告
しずおか子育て防災ネットワーク
静岡県浜松市 ウェブサイト
助成額
150,000円(2024/09/09)助成⾦の活⽤内容
コロナ禍でオンラインを活用しながら会員の防災意識の向上と交流を行ってきたが、今後は、加入している団体同士の繋がりと連携の強化、顔の見える関係性作りのためのオフラインの勉強会及び交流会に助成金を活用したいと考えている。
災害が発生すると、まずは普段生活している地域で助け合う事になる。そのため、会員が防災の必要性や備えについて勉強会で得た知識を基に、平時から関わっている子育て世帯や連携先へ情報を伝えることで、各団体と繋がりがある人々の防災意識を高めることが期待できる。また、被災時にはどのような支援が受けられるか、そして日頃から関わりのある団体が災害時の支援を考えていることを、利用者である保護者や連携先が事前に知っておくことで、実際に災害が発生した際に、必要な支援をより迅速に受けることが可能となる。勉強会で得た知識を各団体に対してSNSなどを通じて発信し、多くの子育て世帯や関係機関に防災への取り組みを周知することで、災害時には子育て世帯が支援を求めやすくなり、支援者側もネットワークを構築しておくことで、必要とされる支援を適切に提供できる。結果として、災害時に子育て世帯が孤立しない環境を整えることができる。
また、地域住民の一員であり、子育て支援に特化している各会員が勉強会を通じて、小さな子どもがいる日常や生活の実情を地域や行政、関係機関に伝え、災害時にどのような困難が生じるのか、どのような支援が必要かを対話の中で共有する場として勉強会を開催したいと考えている。勉強会の具体的な内容の一つとして、講演会形式で開催し、能登半島地震で被災された方を静岡県に招待して、実体験を聞く機会を設ける予定である。講師は、自身が被災したにもかかわらず、被災直後から地域連携を行い、物資の提供拠点を設けるとともに、子どもたちのケアのための遊び場を提供する活動を行っている。静岡県も伊豆半島があり、大きな地震が起こった際は能登半島と同じような状況になる事が想定されるため、直接お話をお聞きし、会員同士でコミュニケーションを取りながら、防災及び災害時の対応を考える機会としたい。この勉強会では、加入団体だけでなく、子育て世帯や地域の方々に参加してもらえるような内容や開催方法にし、しずおか子育て防災ネットワークと連携している行政や社会福祉協議会など関係機関の方々にも参加を呼びかける。また、災害が起こった時の困り事など、実際に被災した方の体験談を通して、よりリアルにイメージしてもらえるようにする。やはり、それぞれの立場があり、経験してみないとわからない事も多い。そのため、子育て世帯だけでなく、高齢者・地域住民・行政等連携機関など多くの立場からの意見を共有し、相互で助け合うことができるような話合いの場を設けることを目指す。防災の視点を通して、地域に住むそれぞれの立場の方々が意見を出し合うことで、子育て世帯だけでなく地域住民の困りごとや必要な支援について相互理解を深めることができると考える。これらの意見をもとに、今できる繋がり作りの方法やアイディアを考え、地域の方々との繋がりを強化し、平時から理解が得やすい関係性を築くことができると考えている。
また、地域として平時からできる繋がり作りについて対話することで、実際に各地域で、平時から取組める活動が生まれていく事を期待する。勉強
会を通じて、地域の繋がり作りが平時から重要であると感じてもらう事ができれば、会員各自が活動している静岡県内のそれぞれの地域で、災害時を見据えた平時からの活動が、各地域の特徴を踏まえて各団体で独自に展開されていくのではないかと考える。このような活動を日々続けて行くことで、静岡県の多くの場所で、災害に強いコミュニティが形成され、広がっていくのではないかと考える。
さらに、災害時には普段から大変だと感じていることが、いつにもまして困難なものとして現れる。現在の子育て世帯は、地元を離れ全く縁のない場所で生活し、子育てをしている方も多い。そのため、災害が起こると支援が届きにくくなり、子育て中の方自身も支援を躊躇ってしまうことがあった。これは2022年の台風15号による豪雨災害で被災した静岡市の支援に入った際に経験したことである。したがって、子育て世帯に対して平時から関わりを持ち、災害時にも顔の見える関係性を築く事で、困った時にSOSを出しても大丈夫であるという関係性作りが大切である。そのために、様々な子育て支援団体とネットワークを構築し、防災に関して考える場として勉強会を活用し、多くの子育て世帯に広め、普段から支援の手を求める事ができる関係性づくりに役立てたい。災害時には、子育て世帯を適切に支援できるよう、各団体、行政、関係機関との関わりも深めていきたい。
活動報告
今回、さわやか福祉財団の助成金を活用してしずおか子育て防災ネットワークでは以下の活動を行う事ができました。ご報告させていただきます。
<東部勉強会>令和6年12月2日開催 「被災しても「やりたい」を叶えるために今できること 伊豆半島の仲間づくり&勉強会~災害が起きた!その時子育て世代で支え合うために~」
能登地震の経験者である講師坂下賀英子様をお呼びし、発災当時行ったことについて経験を伺いました。被災翌日から支援物資の配布を行い、被災10日目に、親子のための炊き出しと子どもが思いきり走り回れるイベントを開催したそうです。被災時に彼女たちを助けたものは、日頃からのつながりだったと語ってくれました。能登半島と地理的条件が似ている伊豆半島での開催は、能登地震の経験を活かすことができ、伊豆半島が被災した際の静岡県内のネットワークの動きについても考えさせられるきっかけとなりました。
‐勉強会の参加者の感想の言葉‐
・今回、この勉強会で、今まで繋がりのなかった方たちと繋がりが持てたり、団体のメンバーが増えたりと、とても良い機会をいただきました。
・講師のお話から「繋がることの大事さ、それも平常時に」ということを実感し、「しずおか子育て防災ネットワーク」に参加できていることのありがたさを改めて感じました。
<西部勉強会>令和7年2月8日開催 「知って安心!災害時のアレルギー対策」
災害時、衛生環境が悪化する中で、特に子どものアレルギーの問題は深刻です。しかし、その困難さは当事者にしか理解できない現状があり、避難所などでの理解も十分でないのが現実のようでした。勉強会では、アレルギー支援ネットワーク中西里映子様、協定を結んでおりますこども女性ネット東海藤岡喜美子様、そしてしずおか子育て防災ネットワーク代表原田の講義と、グループトークを行い、学びを深めました。
<中部勉強会>令和7年5月17日~18日開催
「乳幼児を守る!親子避難所Camp2025」を開催いたしました。このイベントは、主な参加対象者を乳幼児がいる子育て世帯と子育て支援に関わる方とし、災害時の避難所への避難を想定して、体育館で乳幼児を連れて避難所生活をするとはどういうことなのか、を実際に体験してもらい、災害時の備えを考えていただく機会の提供を目的として行いました。当日は、78組165人(こども54人うち乳幼児15人・0歳2人)、学生ボランティア19人の参加があり、災害時の食事・トイレ・寝る場所など様々な防災に関するブースや体験を提供することで、多くの参加者に災害時の備えを意識するきっかけになったと考えています。しずおか子育て防災ネットワークとしては、座談会も開催しました。座談会では、参加したことによる率直な意見も聞かれるとともに、顔の見える関係作りも出来たと考えております。
<西部勉強会>令和7年8月24日開催 「経験者の声から考えよう!乳幼児の命を守る災害対策」
当時5歳の心臓病をお持ちの息子さんと東日本大震災を経験された菅野あゆみ様にその経験をお話しいただきました。菅野さんからは、被災後の生活環境や、息子さんの体調の不安、必要な生活用品がなかなか手に入らなかったこと、薬の確保の難しさ、周囲とのつながりについてなど、当時の状況を時系列で詳しくお話しいただきました。原発事故の影響や家庭内での混乱など、5歳という遊び盛り、そして心疾患を抱えるお子さんと暮らす家庭の視点から語られたお話には、多くの学びがありました。「いつも通り明日が来ると思っていたけれど、それは当たり前ではなかった」という言葉からは、南海トラフ地震が想定される静岡県に住む私たちにとっても「自分ごと」として考える必要性を改めて感じさせられました。会場・オンラインそれぞれ、「災害に備えて、被災したときに、自分たちができること」を中心に参加者同士で意見を交わしました。
今後の展開
災害はいつ起こるかわかりません。私たちは、災害時に乳幼児を抱える子育て世帯への支援に焦点をあて、さまざまな分野の勉強会を企画・運営してきました。
これまでの取り組みから、多くの方が日常的に乳幼児と接する機会が少なく、その特性や生活リズムへの理解が十分に浸透していない現状が明らかになりました。その結果、災害時の支援に乳幼児世帯の視点が反映されにくく、また当事者である世帯が声を上げにくい状況が生じやすいことが確認されました。さらに、アレルギーや医療的ケアを必要とする子どもを抱える家庭が存在することも共有され、専門的な知識に基づいた備えや支援体制の整備が重要であることが示されました。
静岡県内の子育て支援団体の集合体である「しずおか子育て防災ネットワーク」は、子育て支援の専門性を活かし、乳幼児世帯のフォローを継続するとともに、地域社会に向けた理解促進の発信を行い、災害時に乳幼児世帯の視点を反映した支援につなげていきます。そのために、乳幼児の生活特性の周知、声を届けやすい環境づくり、顔の見える関係づくりを平時から重視し、各団体が拠点地域の自治体と連携しながら取り組みを進めていきます。
今後は「誰一人取り残さない防災」の実現を目指し、災害時に乳幼児世帯にとって必要となる支援のあり方を検討し続けます。静岡県内外に広がるネットワークを活かし、得られた知見を子育て世帯や関係機関にとどまらず、自治体や自治会など地域の方々へも平時から共有し、有事に備えられる体制づくりへとつなげていきます。
添付資料

