「地域助け合い基金」助成先報告

一般社団法人 プラスケア

神奈川県川崎市中原区 ウェブサイト
居場所見守り

助成額

150,000円2025/01/20

助成⾦の活⽤内容

2025年4月、暮らしの保健室・川崎から徒歩15秒の場所に「保健室となり文庫」をオープンさせます。現在の暮らしの保健室の利用者数はどんどんと増え、ニーズが高いことは明らかですが、来室者は「話すことを通じてつながりたい方」が多く、一方で「人とはつながりたいけれど話すエネルギーが低い方」や「いつもはお話しするために来ているけれど、今日は人の気配を感じるところでゆっくりしたい」という方の過ごせる場所までは確保できていませんでした。「つながりたいときにつながれると信じられる、ひとりでも安心していられる居場所」があることでつながれる方たちのスペースを作りたい、その必要性があると感じてきました。

そこで私たちは、暮らしの保健室からほど近い場所で、本を読みながら安心して一人で過ごし、保健室と行き来ができる居場所、として「保健室となり文庫」を開設することにしました。また、暮らしの保健室は、市民の生活の中に医療とのつながりを作るための取り組みと言えますが、それでもまだ市民からは敷居が高いと感じられる面があります。
それに対し、「本を通じてつながれる場」である保健室となり文庫は、より生活に近いところで市民とつながるための場といえます。つまり、医療と地域との関係性をみたときに、より医療側に近しいのが暮らしの保健室、より市民生活側に近しいのが保健室となり文庫であり、その両側からトンネルを掘って、市民と医療との間にある分断を取り除いていこうと考えています。対象となるのは、小学生~高齢者までを想定しており、年齢や属性による区分は設けないものの、その中で「孤独・孤立」に陥っている人が主たる対象となります。
2024年に施行された孤独・孤立対策推進法に則り、全世代・あらゆる人が孤独・孤立の状態に陥る可能性があることから、そのような方々が本を通じて暮らしの保健室や社会・まちとつながっていくことを、保健室となり文庫は支援していくつもりです。具体的には、本(言葉)の処方箋や、地域ギャラリーを室内に設けることにより、本やアートをツールとした社会的処方を行う拠点とする考えです。前述の「アートコミュニケーター(ことラー)」の方々に店員として参画頂きます。

活動報告

私たち一般社団法人プラスケアは2017年に設立し、「町なかでの暮らしの延長線上で気軽に医療者とお話しや相談ができる場所」である、暮らしの保健室を運営してきました。
10代から80代くらいまで、年間1000人の方々が訪れ、自身の心身の悩みのみならず、不登校の問題や、職場・学校での人間関係、人生相談まで多岐に渡るお話を、暮らしの保健室でされていきます。しかし一方で、暮らしの保健室は入ったら「お話ししましょう」という環境のため、「今日はお話をするほどの元気は無いのだけど、一人で過ごすのは少しつらい」といったときには、暮らしの保健室が安全・安心な場所とはならず、孤独・孤立に陥ってしまっていました。
そこで私たちは、2025年4月、暮らしの保健室から徒歩15秒の場所に「安心して一人で過ごせる、本のある居場所」をコンセプトに、「保健室となり文庫」という私設図書室を開設しました。こちらは、入室して本を読むだけなら誰でも無料。会員に登録すれば、本を借りたり、2階の研究室も使用できる特典が受けられます。今回、さわやか福祉財団様の助成金を受け、保健室となり文庫の本棚の設置など、内装を整えるための一部として資金を利用させていただきました。このような環境に、2025年度(2025年4月~2026年3月)は733名が来室しました(191日開室)。
保健室となり文庫の本たちは、全て「書き込みができる」仕様にしました。すると、本を通じて交換日記のような交流が生まれるきっかけになったのです。例えばある人が「何かあった日は、一駅余分に歩きたくなる」といった本の一節に対し「わかります!同じような人、いますか?」と書き込みがありました。すると後日、それに対して「私もです。それでいまここに来ました」と返事。お互い、顔も名前も知らない、またこの場所を訪れた時間も全く異なる二人のやり取りですが、そういったやり取りを通じて「自分の声にこたえてくれる人がいる」認識が、孤独を癒していくのではないかと思います。
また、保健室となり文庫は、この場所だけの活動にとどまらず、本という共通のテーマを通じて、同じエリアにある「本のある居場所」ともつながりを作ることができました。具体的には、川崎市の書店である「文教堂」をはじめ、「TACO HAUS」「Shinjo Gekijo」「えほんの森図書館」「千年共店」とつながることができ、2025年10月~11月には、これらの本のある場所を巡って「まちの本棚めぐりスタンプラリー」を開催することができました。こちらについても、延べ377名の方にご参加を頂きました。
今回、保健室となり文庫を作ったことは、多くの人にとって必要性はあるもののややハードルも高かった「暮らしの保健室」という場所を、本というモノを通じて、まちとつなげてくれるきっかけになったのではないかと思います。今後、この暮らしの保健室と保健室となり文庫がすぐ近くにあり、暮らしの保健室からでも保健室となり文庫からでも、まちの中で一人ぼっちにならないための場として、多くの方にご利用いただけることを期待しています。

(保健室となり文庫Webサイト)
https://www.hokenshitsutonari.com/
(まちの本棚めぐりスタンプラリーのタウンニュース記事)
https://www.townnews.co.jp/0204/2025/10/17/806855.html
(まちの本棚めぐりスタンプラリーの東京新聞記事)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/445006

今後の展開

2025年のWHO(世界保健機関)からのレポートで、いま孤独孤立は世界中で毎年87万人以上の命を奪っている「目に見えない脅威」と報告されています。日本を含む世界各国に対し、孤独孤立をひとつの「病」として早急に対応を進めるように求めています。
それに対し日本は、2024年に孤独孤立対策推進法を世界に先駆けて施行し、法に基づいた孤独孤立対策が始まっています。この法律の中では、国や自治体だけではなく、国民一人一人が「自分ごととして」孤独孤立をとらえ、お互いに協力・連携していくことが求められると記載されています。
私たち一般社団法人プラスケアは、2017年の設立から、癌や認知症など大きな病気を抱える方々の孤独孤立の問題に取り組んできました。そして近年では、身体的な病気を持っている方だけではなく、精神的な病、また虐待や人間関係の悩みなどより生活の近くにある課題まで暮らしの保健室に持ち込まれるようになってきています。もちろん、暮らしの保健室だけで、これらすべての問題に対応できることはありません。地域包括支援センターや病院といった専門機関、様々な支援団体など民間組織、そして地域に暮らす一人一人と連携ができて初めて、暮らしの保健室も孤立せずに、その活動を続けていけるのです。
そのような状況の中、それら機関をつなげるツールのひとつとして、私たちは「本」を取り上げました。誰に対しても開かれた「本」という文化を通じて、これまでつながりを持ってこられなかった方々とも、お互いに声をかけあうことができるようになりました。「このまちの孤独孤立のために連帯しましょう」という態度は確かに正しい。でも、それだけでお互いが手をつかみ合うことは、実際には難しいのも事実です。そこに「本」という誰しもがワクワクするツールがはさまるだけで、こんなにも楽しくつながることができ、結果的に私たちが達成したかった結果にも早く近づいていけるようになりました。
今回の学びを活用して、来年度は行政などとも連携を進め、より幅広い層への孤独孤立対策を進めていきます。

添付資料