「地域助け合い基金」助成先報告
NPO法人 MAMATO
東京都練馬区 ウェブサイト
助成額
150,000円(2025/03/07)助成⾦の活⽤内容
『重症心身障害児施設主催で、移動動物園を呼んで、地域の方々と一緒に動物に触れよう!』
【経緯】私たちの施設に通う重症児は、生命維持のため、常時医療機器から切り離すことが出来ないお子さんが多いです。外出するには、多くの医療機器や荷物を持参することになるので、家族だけで外出することはとても困難です。健常児のご家族のように、テーマパークや公共の施設に遊びに行くことは、簡単な事ではありません。医療機器が不要でも、人の多い所や大きな音が苦手なお子さんは、やはり不特定多数の大勢の人が集まる所に、ご家族だけではなかなか行く事が出来ません。
又、先日医師が企画している乗馬体験に行って来ました。普段玩具等にも手を伸ばす事がなかなか出来ない児が、ポニーを目の前にすると、自然と手を伸ばし、自発的に触れ合ったことを目の当たりにし、とても驚きました。
これらの理由により、私たちは日頃より当施設利用児に動物と触れ合う機会を設けたいと考えていましたが、場所の確保が難しい事と、経済的な余裕がない事により、実現出来ずにいました。
私たちの施設は近隣の保育園2ヶ所と交流保育を年に数回行っています。お芋ほりやその他の行事に誘って頂き、重症児と地域の子ども達が触れ合う機会を積極的に設定しています。
先日、交流のある保育園主催の消防車見学で、近隣の聖家族寮の中庭を訪れました。聖家族寮とは、女性が自分の人生に責任をもって成長していくことを目的にしている寮で、現段階で就学・就労が困難な18~35歳までの独身女性が、自立や生活リズムの準備をする為の寮です。その施設の寮長の方が、中庭を使って欲しいと提案して下さり、動物との触れ合いであれば、こちらの寮の女性も楽しめるとおっしゃって下さいました。これで、場所の確保の問題は解決され、後は経済的な問題だけとなり、こちらの助成金を知り、申請することにしました。
【活動の目的】
①当施設に通う、外出が難しい重症児が動物と触れ合い、それにより、重症児が充実した時間を過ごし、重症児の家族にも満足感等を味わってもらい、今後の外出へのきっかけになる
②保育園児や聖家族寮の女性たち、地域の方々と交流し、つながりを持つ
③生活支援コーディネーターと初めて共同して地域参加の機会を設ける事で、今後も生活支援コーディネーターと連携を取って行ける企画などを模索する
活動報告
重度の障害があり、外出や屋外での活動が難しい当施設の重症児にとって、念願であった移動動物園が開催できました。
過去に2回、障害を持ったお子さん向けの無料ポニー乗馬体験会に参加し、当施設の重症児たちが、自らポニーに手を伸ばす姿を目の当たりにしました。また、『乗馬なんて無理だよね』と思われる障害の重いお子さんもポニーに乗る事が出来ました。その姿を見て、いつか、当施設の他のお子さんにも体験させたいと強く思うようになりました。乗馬体験や移動動物園等、インターネットで調べましたが、私たちのような小さな施設には、金銭面のハードルが高かったです。
助成金の申請が下りた時は、職員一同で大喜びしました。できれば、特に障害が重く、家族ではとても動物園には行けないお子さんが登園する日にしようという事になり、日程を決定しました。
移動動物園『どうぶつのむら』には、日程調整のお願いや、障害の重い重症児が来る事等を説明しました。
施設内では、すべてのお子さんがポニーに乗れるように、職員一丸となって、ポニーに乗る練習を何回もしました。どれくらいの大きさのポニーが当日来るのか分からず、様々なパターンでポニーに乗る練習をしました。この子は無理かも…、と思う時もありましたが、『乗るだけでも』という目標で取り組みました。また、当日どんな動物が来るのか、写真を見たり、動物の特徴等を学びました。
10日程前から、天気予報を見て、安心したり、心配したり。前日の予報は、朝まで雨で一日強風とのこと。移動動物園は、当日の朝5時までに決定すれば、キャンセル料はかからないという事で、4時から5時まで代表と相談し、重症児にとって強風は敵ですが、実施することに決めました。
開始の10時前から、練馬区富士見台地域包括支援センターの方がいらっしゃいました。企画して下さっていた、折り紙教室と絵本の読み聞かせをしてくれました。動物の触れ合いは一度に20名までなので、待っている時間があり、その時に折り紙や絵本のブースで過ごしてもらいました。子ども達は風が強いにも関わらず、折り紙を抑えたり、一生懸命先生の話を聞いたり、助けを求めたりしながら、折り紙を楽しみました。絵本の読み聞かせはとても良く聞いていました。ボランティアの高齢者の3名は、折り紙の所で紙が飛ばないように手伝って下さったり、入口の門の開け閉めを手伝って下さり、本当に助かりました。
午前中は、普段から交流があり、様々なイベントに招待して下さる近隣の2保育園を招待しました。先生方園児たちは、動物と触れ合い、沢山の笑顔で、皆さん喜んでくれました。当施設の重症児が到着してから、保育園の子ども達と30分ほど交流し、一緒に過ごしました。保育園の子ども達は初めて見る呼吸器等を付けた重症児に、積極的に話しかけてくれたり、呼吸器のルートを見てこれ何?等と、色々と質問をしてくれたり、お手手をつないだりと様々な交流がありました。私たちの施設の子ども達にとっても、保育園の子ども達にとっても、とても大切な経験になったと思います。
会場は、保育園からの紹介で交流していた、『聖家族寮』のお庭を使用させていただきました。お庭を使って下さい、という、聖家族寮さんからのお誘いも、移動動物園の企画につながりました。休憩場所が必要な当施設の重症児たちの為に綺麗で広いお部屋も貸して下さいました。
午後からは、当施設のお子さんとそのご家族が参加しました。聖家族寮の利用者さんや職員の皆さんも一緒に、動物と触れ合いました。
心配していた風は、やはり予報通りの強風で、折り紙が飛んでしまうトラブルがあったり、風を嫌うお子さんは一時的に泣いてしまう事はありましたが、風による事故はなく過ごせました。
また、全員乗馬!の目標で取り組んだポニー乗馬は、『どうぶつむら』さんが、障害があるお子さんでも乗りやすいように一番小さく、大人しく賢いポニーを連れて来て下さり、見事全員乗馬が出来ました。
今回の移動動物園で、近隣の2保育園の子どもと先生方、聖家族寮の利用者と職員方、練馬区富士見台地域包括支援センターの方とボランティアさん、当施設の重症児とその家族、そして職員、こんなに多くの施設や人々と交流する機会を持つ事ができました。移動動物園を実施することが出来たのは、助成金があったからです。本当にありがとうございました。
今後の展開
私たちの施設は、障害が重く、医療的ケアが濃厚な重症児が多く登録しています。ですが、重症児でも、色々な経験をさせたい、という代表の強い思いで、様々な経験が出来るように日々療育を行っています。
西武池袋線富士見台駅から徒歩5分程度の商店街の中にあり、代表は商店会のイベント担当を務める程、地域との交流も大切にしています。
そんな中で実行できた今回の移動動物園は、その両方を一度に経験出来る企画となりました。今回関わったすべての施設がとても楽しんで頂けたので、来年度も行えるよう、企画を始めました。
また、今回会場として使用させて頂いた『聖家族寮』の寮長さんは、庭や部屋、都合が合えばいつでも利用して欲しいとおっしゃってくださったので、コンサートも企画したいと考えている所です。
前述した通り、医療的ケアが濃厚なお子さんでは、呼吸器や吸引器、モニター、酸素ボンベ等、命を繋ぐための医療機器を沢山バギーに積んでいるため、移動がとても大変です。また、消化器系の問題により、いつ嘔吐するか分からないお子さんも多いです。自分の力で咳が出来ず、呼吸状態の問題もあるため、痰を吸引しないと生命を保てないお子さんもいます。そのような重症児では、とにかく外出すること自体がとても大変で、家族だけで交通機関を利用したり、行楽地に行く事が困難なお子さんが多いです。今回のような企画に参加することで、重症児のお子さんが楽しむ姿を見て、今度は動物園に連れて行こうと思えたり、我が子が楽しめるなら、少し頑張って行楽地に連れて行こうと思って頂ける事もあると思います。
また、地域との交流は、このような重症なお子さんを地域の方々に知ってもらうきっかけになると思います。きっと今回重症児と交流した保育園の子ども達は、電車や行楽地でこのような障害を持ったお子さんを見かけたら、『あ、私知ってる!病気がある子なんだ、でも、皆一緒に遊べるんだよ』等、様々な言葉をお家の人に伝えるかも知れません。そしてその言葉を聞いた重症児の親御さんも、不安な外出に心が落ち着くかもしれません。
今後も重い障害があるお子さんでも、経験出来る、楽しめる。そして、地域との交流も沢山出来る企画を考え、実行できるように、施設一同取り組んで行きます。