「地域助け合い基金」助成先報告
NPO法人 みんなのわいっぽいっぽ
長崎県佐世保市

助成額
150,000円(2025/07/10)助成⾦の活⽤内容
自閉症をはじめとする発達障害・不登校のお子さんを育てる保護者(特にお母さん)は母子分離不安なお子さんと離れず24時間一緒に過ごしています。今回、少しでも保護者が安心して一息つけるような時間と空間を提供したいと考えています。
障害のあるお子さんがいるご家族を対象に「いっぽいっぽ居酒屋」を開きます。
親子で参加でき、食事と飲み物を提供します(アルコールを含む)。
短時間の営業にしてしまうとその時間に来ることが出来ないご家庭もあるため(パニック等の原因により)、お昼から夜まで居場所を開設します。参加者は都合が良い時間に来て、お子さんの状態を見ながらそれぞれのペースで過ごすことが出来ます。まずはお母さんに元気になってもらうことを目的としています。
この企画を立案した理由は、子連れで居酒屋に行くと店員さんや周りの人にひどく怒られたり、夫婦で育児について話し合うために食事に行くと、不登校の子どもの育児放棄だと言われたという事例が多々あったからです。
親子で安心してくることができ、同じ境遇の家庭とより深く交流できる居場所を提供したいと考えました。
定期開催を目標に、まずは一度開催してみて現状を見たいと思います。
場所は公民館等を予定しています。
対象:障害のあるお子さんがいるご家族、支援者や関係者
活動報告
このたび、さわやか福祉財団の地域助け合い基金を助成していただき、「いっぽいっぽ居酒屋」を開催することができました。当初は公民館などでの開催を想定しておりましたが、本事業の趣旨を受け止めてくださった地域のお店にご協力いただき、温かくくつろぎやすい雰囲気の中で実施することができました。
特性のある子どもを育てるお母さんは、普段から周囲に気を使い、外食すら控えることも少なくありません。子ども本人も感覚過敏や不安から行きたい場所があっても外出を怖がることがあります。そうした背景から、ご家族が心から羽を伸ばす機会は極めて限られています。だからこそ、今回は、お母さん、お子さん共に安心して休息できる特別な時間となりました。実際に参加した方々の多くが「子どもが生まれてから初めて外でお酒を飲んだ」と語り、その表情には解放感と喜びがあふれていました。
当日は、当団体会員、フードバンク協和の事務局長、佐々町役場の保健師さん、佐世保市社会福祉協議会ボランティアセンターの館長の方々にも支援者として参加いただきました。行政・団体・地域住民が一堂に会し、障害や子育ての課題を共有しながら交流できたことは大きな成果でした。普段の座談会では聞けていなかった悩みや現状を伝え合えたことが、次の活動への大きな励みとなりました。
運営にあたっては会場や日程調整などに苦労しましたが、最大の挑戦は「お母さんが息抜きにお酒を飲むこと」に対する社会の目でした。子育てを担う母親が「お酒を口にするなんて」と批判的に見られることがあります。しかし、私たちはあえて“居酒屋”という言葉を選び、堂々と伝えました。お母さんが少し息を抜き、お酒を飲みながら笑顔になることは決して悪いことではない。むしろ子どもや家庭にとって大切なことだということを世の中のお母さん、そして社会全体に向けた当団体からのメッセージとして開催いたしました。
実際、当日の会場では、久しぶりに心から笑う母親の姿や、互いの悩みを打ち明け合い前向きな表情に変わっていく姿を見ることができました。終了後には「心が軽くなった」「また頑張ろうと思えた」との声が寄せられました。その笑顔こそが、私たちの思いを証明してくれたのだと思います。
助成をいただいたことで、私たちは地域とのつながりを強めることができました。そして何より、お母さん方や子どもが安心して息をつける居場所の必要性を改めて実感しました。小さな一歩かもしれませんが、この「いっぽいっぽ居酒屋」で生まれた笑顔とつながりが、地域にとって確かな力になると信じています。今後も一歩ずつ、支え合える地域づくりを続けてまいります。
今後の展開
私たちが地域の方々に最もお伝えしたいのは、お母さんたちが安心して休み、励まし合い、そして次の一歩を踏み出せる環境をつくりたいという思いです。子育てにおいて、特に発達に特性のある子どもを育てるお母さん方は、24時間気を張り詰め、心の休まる瞬間を持ちにくい現実があります。休むことは悪いことではなく、一人じゃないと感じられる場があるだけで、気持ちは驚くほど前向きになり、子どもへの関わりも変わっていきます。
私たちの活動では、ただ話をするだけに留まらず、一緒にやってみようと次の行動に結びつけられる関係性を大切にしています。同じ境遇だからこそ共感し合える仲間がいること、その仲間と共に学び、挑戦できる場があることは、家族の未来に大きな希望をもたらします。
「いっぽいっぽ居酒屋」や座談会を通して実感したのは、お母さん方が少し肩の力を抜き、笑顔を取り戻すだけで、子どもたちの表情までも明るく変わっていくということです。お母さんの安心は、そのまま子どもの安心につながります。だからこそ私たちは、堂々と「休んでいい」「楽しんでいい」と言える地域文化を根づかせたいと考えています。
そして、地域の皆さまには、いろんな特性を持つ子どもや当事者が身近にいるということを、少しだけ知っていただきたいです。深い理解や特別な支援をすぐに求めているわけではありません。ただ、「そういう子もいるんだね」と心に留めてもらえるだけで、親も子も孤独から解放され、安心して地域の一員として暮らしていけます。
これからも、母も子も安心して歩める場を広げ、地域と共に支え合いながら、一歩ずつ進んでいきたいと思います。小さな一歩の積み重ねが、やがて大きな変化につながることを信じて、私たちはこれからも「いっぽいっぽ」の名の通り、一歩ずつ着実に歩んでまいります。