緊急提⾔「希望するすべての要介護者」に助け合いによる
⽣活⽀援(総合事業の補助によるサービス)を

厚生労働省に提言を行いました。ご賛同くださいますようお願いします。

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受付は終了しました。多大なご賛同をいただきありがとうございました

2020年11⽉2⽇

厚⽣労働⼤⾂
⽥村 憲久 様

公益財団法人 さわやか福祉財団
会長  堀田 力
理事長 清水 肇子

緊 急 提 言
「希望するすべての要介護者」に助け合いによる生活支援
(総合事業の補助によるサービス)を

1.要介護者が総合事業における助け合いによる生活支援を利用できる仕組みは、要介護者が安心といきがいを持って生活するのに大いに役立ちます。

(1)住民主体の助け合い団体が、補助の範囲が広がることにより助け合いによる生活支援(訪問型サービスB、D及び通所型サービスB)の対象者を広げることは、要介護者を主とする新しい対象者に、助け合いによる安心といきがいをもたらします。

(2)今回の改正反対論には、「要介護者には専門職による介護給付が必要」との意見があり、たしかに身体介助の大部分や、認知症者への対応など、専門職による介護は多くの場合に必要とされるのですが、介護の中でも生活支援は、自ら生活に必要な行為をしている一般人が、他者のためにこれを行うために必要な知識や技術を習得すれば、ボランティアとして行うことが十分可能なものです。このような行為まで専門職による介護給付でなければならないというのは、適格性を有する一般人の社会参加行為を不当に制限するものというほかありません。

(3)その専門職は、少子化による人材不足のため、他の多くの分野における場合と同様に、必要な数を確保できなくなっており、その状況が好転する見通しは立っていません。そのため、介護離職や介護うつ、介護殺人など、介護保険法施行前に戻りつつあるような社会問題が発生しています。その対策としては、外国人専門職の一層の導入とあわせ、生活支援を行う助け合いの裾野を広げることが重要で、その視点からも、要介護者に対する生活支援に適性ある一般人を迎えて受け皿を広げることが介護の社会化を後退させないための重要な措置になります。

(4)適格性のある一般人が行う助け合いによる生活支援は、「尊厳の保持」という介護保険の目的に沿う活動です。助け合いによる生活支援は、ただ給付し、ケアするだけのものでなく、精神的な交流を重視して、本人の意思を最大限に尊重し、本人のできることは本人に委ねるなど、自己肯定感を高め、いきがいをもたらします。助け合いによって尊厳を確保し、人生の質を高める人の数は少なくありません。もちろん精神的に自立し、助け合いを煩わしく感じる人も少なくありませんが、そういう人は当然ながら助け合いによる生活支援を選ぶことはありません。

(5)さらに重要なことは、今回の改正の対象である助け合いによる生活支援には、サービスD(移動サービス)を典型とする「介護給付では提供できないサービス」が含まれていることです。このサービスが、補助の範囲が広がることによって拡大することにより、要介護者等の外出機会が広がれば、どれほど要介護者等が生きるうえでの充実感が高まることでしょうか。容易に想像できると思います。

2.今回の改正は、「介護給付の総合事業移行問題」とは全く関係がありません。

(1)反対論の有力なものとして、「要介護者に対する介護給付を総合事業に移行するための布石ではないか」というものがありますが、これはあり得ない憶測です。

(2)助け合いによる生活支援は、その行うサービスの範囲が生活支援の範囲に止まっているのであって、要介護者がこれを利用したからといって、要介護に欠くことのできない身体介助に取って代われるはずもありません。また、助け合いに限らず総合事業全体を考えても、これをもって介護給付に代えるのは不可能であり、布石の打ちようもありません。

(3)むしろ、助け合いによる生活支援は、前述のとおり、介護給付では行えないサービスも行っており、要介護者等にとって、サービスの縮減どころか、拡大になっています。

(4)反対論には、「市区町村が要介護者に対し介護給付抑制のために総合事業に誘導するのではないか」という意見がありますが、身体介助を必要とする要介護者にそのサービスをなくすような誘導をすることはあり得ないうえ、仮にそういう話があっても本人ないし家族等が断れば済む話であって、あり得ない想定をしてサービスの拡大を拒むのは不当というほかありません。

(5)反対論は、今回の改正は介護給付を総合事業に移行するための布石だとして反対していますが、布石であり得ないことは、以上に述べたとおりです。 ただ、少子化による人材難や少子高齢化による財政難が進む現状及び近未来を考えると、介護保険制度を持続可能であって誰一人取り残すことのないものとするために、一方では介護保険料の上昇に加えて増税を、他方では介護給付の合理化策を、政党色を抜いた純粋に中立公正な立場に立ち、国民全体、特に、経済的、社会的弱者にとって最善の策は何かという見地から抜本的かつ建設的に検討し、国民的議論を行って合意を形成すべきだと考えます。 いわゆる軽度者についての総合事業移行問題についても、その議論の中で広い視野から検討すべきだと考えています。

3.意見の骨子と提言

(1)厚生労働省が令和2年7月段階で示した「要介護者が総合事業を利用できる仕組み」(以下「7月案」という)は、助け合いによる生活支援を受ける多くの要介護者に安心と尊厳(いきがい)をもたらすものです。

(2)これに対する反対意見は、専門性のある介護給付を必要とする者の立場から、介護給付はすべて専門家が行うべきと主張し(7月案は、専門性のある介護給付を必要とする者には、当然に介護給付が行われる仕組みです)、あるいは、介護給付を総合事業に移行するための布石だという、あり得ない憶測(身体介助を行えない助け合いが介護給付に取って代われるはずもない)に基づく主張をすることにより、助け合いの拡大によって安心と尊厳(いきがい)を得ようとする多くの要介護者等の幸せを、いわれもなく奪おうとするものです。

(3)今回の改正で、要介護者が助け合いによる生活支援(補助により実施される第1号事業のサービス)を利用できることになるのは、その範囲で要介護高齢者を幸せにするものであって歓迎していますが、これに要支援段階からの継続利用を要件として加えたことは、7月案からの後退であり、それによって、相当数の要介護高齢者が安心と尊厳(いきがい)ある生活を獲得する道が、いわれもなく塞がれてしまいました。 厚生労働省は、速やかに継続利用要件をはずし、補助によるサービスの対象者は「希望するすべての要介護者」とすることを求めます。

(4)いわゆる軽度者問題を含め、介護保険制度のあり方については、政党色のない中立公正な立場に立って、人材難、財政難の中において国民全体、特に経済的、社会的弱者にとって持続可能な最善の制度は何かの見地から抜本的かつ建設的に検討したうえ、国民的合意を形成すべきだと考えます。

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